スペースXが、スターリンク・モバイルの米国内地上5G網向けにクアルコムのDragonwing携帯電話インフラを採用した。クアルコムは11月4日(水)午後10時30分頃(日本時間)/米東部時間同日午前8時30分頃、QRU100無線装置、QDU100分散ユニット、商用グレードのLayer 1ソフトを供給する複数年契約だと発表した。クアルコム自身、自社にとって「これまでで最大の5G案件」と位置づけている。
展開は2027年から。マクロ基地局は「数万局」規模を想定する。無線は64送信・64受信のMassive MIMO(64T64R)で、カバー、容量、周波数利用効率を同時に狙う構成だ。
何が届くのか
クアルコムのBusiness Wire発表と公式ニュースによると、QRU100はMassive MIMO無線機側の処理、QDU100は分散ユニット側のLayer 1処理を担う。売りの一つは「ワットあたり性能」。数万局を張るなら、局あたりの効率がそのまま損益になる。
金額は非公開。CNBC、Teslarati、RCR Wireless、Drive Tesla Canadaも同じ骨子を伝えている。本稿執筆時点でNot a Tesla Appに専用記事は見当たらなかった。
クアルコムのデュルガ・マラディ上級副社長は声明で、「スペースXとともに米国で世界水準の携帯インフラを築き、いまの5Gを進めつつ、将来のAIネイティブ6Gの土台にもつなげたい」と述べた。スターリンク・モバイル本体は5G案件だが、クアルコムは先の話も同時に売っている。
衛星か地上か、ではない
スターリンク上級副社長のマイケル・ニコルス氏はこう言い切った。「家でも外出先でも電話が切れる時代であるべきではない。スターリンクは、どこにいてもつながる、米国初の全国衛星+地上統合網を作っている」。
衛星のダイレクト・ツー・セルが屋外の穴を埋め、クアルコム製の地上局が人が集まる場所の容量を足す。役割分担がはっきりしている。スペースXはこの数カ月、EchoStarや800MHz帯などスペクトルの積み上げ、衛星向け周波数のFCC手続き、鉄塔アクセスや消費者向けブランドにつながるBoost Mobileをめぐる報道と、部品をそろえてきた。クアルコムは、そのスペクトルと鉄塔を「実際に電話がかかる網」に変える側だ。
競合も動いている。AT&TとAST SpaceMobileは地上から衛星へのハンドオフを示し、楽天モバイル経由の日本の文脈でも報じた。勝負は「宇宙と地上を、利用者が気づかない一本の通話にできるか」に移っている。
EVXの視点
日本は、米国がいま組み立てているハイブリッドを先に売っている市場だ。ドコモのStarlink Directは契約者数1,000万を突破し、KDDIのau Starlink DirectにはV2契約も続く。ソフトバンクと楽天も衛星連携の輪に入っている。スペースXが米国で数万のマクロにクアルコム無線を載せるのは、「隙間は衛星、人ごみは地上5G」という日本がすでに試している型のアメリカ版だ。もしスターリンク・モバイルがうまくいけば、日本のキャリアへの圧力は「衛星を足すか」ではなく、「ハンドオフはどれだけ滑らかか、料金はいくらか」になる。答えは米国の建設現場を見ればいい。
れすちゃんのひとこと
東京在住の写真家で、テスラは5年で4台目。FSDは日本未承認なので、「他の国が先にいいものを使う」のを見るプロだ。今回は悔しくない。日本はすでにドコモ、au、ソフトバンク、楽天が普通のスマホに衛星をつなぎ始めている。米国はいま、スターリンクの鉄塔側にクアルコムを載せて追いつけ追い越せ、という順番だ。モデルYがまだコンビニまで自動運転してくれなくても、山手線を降りた瞬間に通話が切れないことくらいはお願いしたい。スターリンク・モバイル、東京の練習風景を見ておいてほしい。
出典: Qualcomm(Business Wire)、Qualcomm公式、Qualcomm公式X、Starlink公式X、CNBC、Teslarati、RCR Wireless、Drive Tesla Canada。
— れすちゃん(Lester Miyashiro)、EVX News
アイキャッチ:ドイツ・キールのテレコム5G基地局のディテール(2020年12月6日)。写真:Fabian Horst / Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0(トリミングあり)。
