米連邦通信委員会(FCC)が、衛星とスマホを直接つなぐ通信に使える電波を大幅に増やす方向へ動きました。ワシントンで開いた10月の定例会合で、免許済み周波数のうち新たに482MHz分を「ダイレクト・トゥ・デバイス(D2D)」サービスに開放する案を採択。スペースXが「スターリンク・モバイル」として提供している、あのサービスです。
FCCがXで結果を伝えたのは10月30日(金)午前0時18分(日本時間)/米東部時間29日(木)午前11時18分。ただしこれは規則案の段階で、最終決定ではありません。この日、誰かに電波が割り当てられたわけでもありません。それでも、FCCが「宇宙からの補完カバレッジ(SCS)」と呼ぶ枠組みとしては過去最大の見直しで、スペースXの「電波の買い物」とも見事にタイミングが重なっています。
FCCが採択した中身
FCCの会合概要やTeslaratiによると、今回の規則制定案(NPRM)は、衛星とスマホの直接通信に使える周波数帯を5つから13に増やすものです。FCCは「負担の大きい」要件をなくし、従来の移動衛星サービス(MSS)の規則とも整合させるとしています。Drive Teslaによると、カー委員長とゴメス委員、トラスティ委員の3人が賛成しました。
周波数の量以上に効きそうなのが、仕組みの変更です。現行ルールでは、衛星事業者は同じ周波数を持つすべての携帯会社から、米本土全体といった広い地域単位で電波を借りる必要があります。新しい案では、携帯会社との共存合意があること、あるいは地上の免許を自ら持っていることを届け出れば済み、実際にサービスする地域だけを免許エリアに選べるようになる、とTeslaNorthは説明しています。
あわせて、1675〜1695MHz帯と2020〜2025MHz帯の計25MHzをオークションにかける案も進みました。地上通信、D2D、またはその両方に使える帯域です。
携帯大手は反発
AT&T、ベライゾン、TモバイルはこのD2D案を歓迎していません。3社は業界団体CTIAを通じて10月22日にFCCへ書面を提出し、482MHzのうち290MHzを占める2.5GHz帯と3.45GHz帯を外すよう求めました。衛星の電波が5Gに干渉しかねない、という主張です。賃借の代わりに共存合意で済ませる仕組みにも反対しました。一方のスペースXは、逆に902〜928MHz帯の追加を求めています(Teslarati)。
日本時間30日朝の時点でFCCは採択文書を公開しておらず、この2つの帯域が残ったかどうかはまだわかりません。官報(連邦官報)への掲載から60日後が意見提出の期限で、その後にもう一度、最終規則の採決があります。日程は未定です。
スペースXは「自前の道」も整備中
スペースXは借りるだけの立場に甘んじていません。今年はエコースターのAWS-4帯とHブロックの免許を約170億ドル(約2.7兆円)で取得することで合意し、今月にはグレイン・マネジメントが持つ全米規模の800MHz帯の免許の買収にも合意した、とTeslaratiは伝えています。FCCは10月6日に次世代のダイレクト・トゥ・セル衛星を最大1万5,000基打ち上げる計画を承認し、21日にはトライスターから未使用のAWS-3免許を買い取る件も認めました。グウィン・ショットウェル社長は、自社の電波を使ったサービスを2028年初めに始める目標を示しています。新ルールでいう「自分で地上免許を持つ」ルートそのものです。
日本はすでに、FCCがこれからルールを書こうとしている世界にいます。docomo Starlink Directは5カ月あまりで利用者1,000万人を突破し、ドコモの全プランで無料です。米国では、携帯大手が提携相手でもある衛星と電波を取り合う構図。Tモバイルはスターリンク・モバイルの米国でのローンチパートナーでありながら、2.5GHz帯から衛星を締め出す動きの先頭に立っています。なかなか気まずい食卓です。
出典:FCC 2026年10月定例会合、連邦官報の会合告示、FCCのX投稿、Drive Tesla、Teslarati、TeslaNorth、SatNews、ソーヤー・メリット氏のX投稿
— EVX News編集部
アイキャッチ画像:カリフォルニア州バンデンバーグ宇宙軍基地からスターリンク17-20ミッションを打ち上げるファルコン9(2026年1月25日)。写真:米宇宙軍 / 2nd Lt. Andrew Taller(Wikimedia Commons経由)(パブリックドメイン、トリミングあり)
