先週は「アンチテスラな空気」について書きました。今週は空気ではなく、数字で語りたいと思います。
というわけで、見出しを数えました。とにかくたくさん。15のニュースサイトから、まる1年分、合計1,399本。目がまだ痛いです。
まず、私たちの立ち位置
最初に正直に言っておきます。EVX Newsははっきりテスラ寄りのサイトです。このコラムの名前で、もうお気づきだと思いますが。
それでも、ニュース記事では中立を保つよう全力を尽くしています。すべての記事を複数の情報源で確認し、政治には立ち入りません。
なので、このコラムはその前提で読んでください。テスラ寄りのサイトも、ほかのサイトとまったく同じ基準で採点したのはそのためです。詳しくは後ほど。
これは科学的な研究ではありません
本当に、違います。
読んだのは見出しだけで、本文は読んでいません。見出しは1本ずつ、人の手で読んで分類しました。見出しは記事の中身を測るそれなりの目安だと考えていますし、多くの人がスクロール中に目にするのも見出しです。とはいえ、見出しが記事のすべてではありません。
見出しの分け方
4つの箱
- ネガティブな印象づけ: 書き手が「味付け」を加えたもの。皮肉、含みのある言葉、事実のふりをした意見など。例:「テスラ・ロードスターは幻のままでもよかったのでは」
- 悪いニュース: 実際に起きたマイナスの出来事を、そのまま報じたもの。事故、リコール、訴訟、当局の調査、販売減など。例:「テスラ、ドアハンドルの安全リスクで中国で約300万台をリコール」 これは偏りとしては数えません。悪いニュースも立派なニュースです。
- ポジティブ: 良い話。新製品、記録、節目、称賛など。例:「テスラ、生産1,000万台という過去最大の節目に到達」
- 中立: 事実だけで味付けなし。例:「テスラとSpaceX、合併を検討する委員会を設置」
見出しはGoogleニュースからサイトごとに集めました。1年分(2025年11月〜2026年10月)は、各サイトから毎月テスラまたはマスク関連の見出しを8本ずつ無作為に抽出。テスラ、マスク氏、マスク氏の会社と実質的に関係のない見出しは除外しました。
1年分の数字
ネガティブな印象づけの割合が高い順です。
| メディア | 見出し数 | ネガティブな印象づけ | 悪いニュース | ポジティブ | 中立 |
|---|---|---|---|---|---|
| Futurism | 93 | 63% | 27% | 0% | 10% |
| Electrek | 91 | 38% | 22% | 20% | 20% |
| Gizmodo | 87 | 33% | 22% | 2% | 43% |
| The Guardian | 90 | 32% | 29% | 4% | 34% |
| Jalopnik | 81 | 32% | 23% | 12% | 32% |
| The Verge | 85 | 31% | 22% | 9% | 38% |
| ワシントン・ポスト | 71 | 27% | 25% | 15% | 32% |
| ニューヨーク・タイムズ | 91 | 25% | 16% | 12% | 46% |
| CNN | 76 | 13% | 22% | 14% | 50% |
| Business Insider | 91 | 11% | 10% | 16% | 63% |
| ブルームバーグ | 96 | 10% | 19% | 20% | 51% |
| InsideEVs | 91 | 10% | 14% | 30% | 46% |
| CNBC | 88 | 8% | 25% | 16% | 51% |
| ロイター | 95 | 6% | 22% | 22% | 49% |
| Teslarati(テスラ寄りの比較用) | 89 | 1% | 2% | 64% | 33% |

1サイトあたり約70〜96本なので、それぞれの数字は上下に約10〜12ポイントずれる可能性があります。
Teslaratiを入れた理由: 私たちと同じテスラ寄りのサイトだからです。もし分類がこちらに都合よく歪んでいたら、ここに表れるはず。結果、Teslaratiはネガティブな印象づけが1%、ポジティブが64%でした。つまりこの方法は、どちらの方向にもサイトの違いをきちんと見分けています。
あわせて1カ月分のチェック(2026年10月3日〜11月3日、各サイト最大50本)もしました。順位はほぼ同じで、トップはまたしてもFuturism(ネガティブな印象づけ68%)、最下位もまたロイターとCNBC(2%)。サンプルが小さいぶん、誤差は約14〜23ポイントあります。
彼ら自身は何と言っているか
いくつかのメディアは、公正さについて公に約束しています。その言葉と数字を並べてみます。
- ロイターは「誠実さ、独立性、偏りのなさ(integrity, independence, and freedom from bias)」と「偏りがなく信頼できるニュースサービス(unbiased and reliable news services)」を掲げています(Reuters Trust Principles)。今回のサンプルでのネガティブな印象づけ:年間6%。
- ニューヨーク・タイムズは「恐れることなく、えこひいきすることなく(without fear or favor)」真実を追求するとしています(Ethical Journalism handbook)。ネガティブな印象づけ:25%。
- ワシントン・ポストは、記者と編集者は「公正さに尽くしている(are committed to fairness)」としています(Policies and Standards)。ネガティブな印象づけ:27%。
- Electrekの編集長は2024年にこう書いています。「Electrekでは、偏りがないと主張するより、自分たちの偏りをはっきりさせたい(At Electrek, we like to be clear about our biases rather than claim we have none.)」(Electrek、2024年9月)。偏りがないとは言っていません。ネガティブな印象づけ:38%。
外部の評価も見てみましょう。AllSidesはロイターとブルームバーグを「中道(Center)」、CNBC、CNN、ワシントン・ポストを「やや左(Lean Left)」、The Guardianを「左(Left)」と評価。Ad FontesはThe Vergeを「左寄り(Skews Left)」、Media Bias/Fact CheckはElectrek、The Verge、Jalopnikを「中道左派(Left-Center)」としています。
大きな注意点:車の話ばかりではない
見出しをテーマ別に分けてみると、目を引くことがありました。大手新聞では、マスク関連の見出しの大半がそもそもテスラの話ではないのです。SpaceX、Grok、X、DOGE、選挙、裁判の話です。
そこで、テスラの記事だけで同じ採点をしてみました。
| メディア | テスラの見出し数 | ネガティブな印象づけ | 悪いニュース | ポジティブ |
|---|---|---|---|---|
| Futurism | 26 | 62% | 38% | 0% |
| Electrek | 89 | 38% | 22% | 20% |
| Jalopnik | 72 | 32% | 25% | 12% |
| Gizmodo | 20 | 20% | 35% | 5% |
| The Verge | 31 | 19% | 32% | 16% |
| ワシントン・ポスト | 12 | 17% | 42% | 25% |
| ブルームバーグ | 28 | 14% | 36% | 25% |
| CNBC | 31 | 10% | 32% | 16% |
| InsideEVs | 91 | 10% | 14% | 30% |
| ニューヨーク・タイムズ | 11 | 9% | 36% | 27% |
| The Guardian | 13 | 8% | 62% | 8% |
| CNN | 14 | 7% | 21% | 14% |
| ロイター | 41 | 5% | 32% | 39% |
| Business Insider | 31 | 3% | 19% | 26% |
| Teslarati(比較用) | 62 | 2% | 3% | 68% |
テスラだけに絞ると、サンプルがかなり小さいところもあります(最少11本)。その場合、誤差は25ポイント以上。結論ではなく、ヒント程度に見てください。
で、アンチテスラなの? アンチマスクなの?
いちばん知りたかったのはここです。メディアはテスラを叩いているのか。それともマスク氏を叩いていて、テスラはその水しぶきを浴びているだけなのか。
同じ1年分のサンプルから、見出しの種類ごとにネガティブな印象づけ(味付け)の割合を出しました。カッコ内は「味付けあり」の本数/全体の本数です。
| メディア | テスラ製品 | マスク氏のほかの会社(SpaceX、xAI/Grok、Xなど) | マスク氏の政治・私生活(技術の話なし) |
|---|---|---|---|
| 15サイト全体 | 19%(572本中108本) | 18%(524本中93本) | 56%(156本中88本) |
| Futurism | 62%(26本中16本) | 57%(46本中26本) | 88%(17本中15本) |
| Gizmodo | 20%(20本中4本) | 33%(49本中16本) | 80%(10本中8本) |
| The Verge | 19%(31本中6本) | 27%(44本中12本) | 88%(8本中7本) |
| Business Insider | 3%(31本中1本) | 7%(41本中3本) | 50%(12本中6本) |
| ニューヨーク・タイムズ | 9%(11本中1本) | 11%(47本中5本) | 55%(29本中16本) |
| The Guardian | 8%(13本中1本) | 24%(41本中10本) | 63%(27本中17本) |
| ワシントン・ポスト | 17%(12本中2本) | 16%(32本中5本) | 50%(18本中9本) |
| CNN | 7%(14本中1本) | 3%(37本中1本) | 36%(22本中8本) |
| Electrek | 38%(89本中34本) | —(1本のみ) | —(なし) |
| Jalopnik | 32%(72本中23本) | 20%(5本中1本) | 67%(3本中2本) |
| ロイター、ブルームバーグ、CNBC | 7%(100本中9本) | 9%(156本中14本) | 0%(9本中0本) |
数字から見えること:
- 15サイト全体で、マスク氏の政治・私生活に関する見出しは、テスラの見出しの約3倍の頻度で味付けされていました。56%対19%です。
- 大手新聞(NYT、Guardian、WaPo、CNN)では、テスラの見出しはほぼストレート。味付けが出てくるのは、マスク氏の政治・私生活の見出しでした。
- ElectrekとJalopnikは事情が違います。サンプルのほぼすべてがテスラの話で、味付けはテスラの見出しそのものにありました。
- Futurismは何でも高め。
テスラの見出しが、会社とマスク氏の政治を直接結びつけたケースは? 今回のサンプルでは多くありませんでした。572本中4本です。
- “Tesla lost $15 billion in brand value in 2025 as Musk stepped deeper into politics, research shows”(CNBC、悪いニュース)
- “‘I Bought This Before Elon Went Crazy’ Bumper Stickers Won’t Work on the New $60,000 Cybertruck”(Gizmodo、ネガティブな印象づけ)
- “Tesla’s European Registrations Are Way Up Thanks To Evidently Short Memories”(Jalopnik、ネガティブな印象づけ)
- “In Europe, Tesla Sales Are Rising Despite Views on Elon Musk”(ニューヨーク・タイムズ、ポジティブ)
小さいサンプルへの注意:多くのマスは本数がごくわずかです。大手新聞のテスラ見出しは各11〜14本、政治のマスには10本未満のものもあり、25ポイント以上ずれることも普通にあります。いちばん信頼できるのは「15サイト全体」の行で、誤差は約±4〜8ポイントです。
余談:テック系サイトとマスク氏の政治
疑問はシンプルでした。テック系サイトは、技術の話がまったくないマスク氏の政治ネタも取り上げるのか?
取り上げるところもあります。各サイトのマスク・テスラ関連見出しのうち、技術の話がない純粋な政治・私生活ネタの割合と、そのうちネガティブだった割合は次のとおり:
- Futurism: 18%(17本)、うち94%がネガティブ
- Business Insider: 13%(12本)、50%がネガティブ
- Gizmodo: 11%(10本)、80%がネガティブ
- The Verge: 9%(8本)、100%がネガティブ
- Jalopnik: 4%(3本)
- Electrek、InsideEVs: 0%
- Teslarati: 1%
比較すると、ニューヨーク・タイムズは32%、The Guardianは30%、CNNは29%、ワシントン・ポストは25%。ロイター、CNBC、ブルームバーグは1〜5%でした。
原文そのままの例をいくつか:”A Huge Number of People Starved to Death After Elon Musk Cut USAID’s Funding”(Futurism)、”Trump Lovingly Pats Elon Musk on Stomach During Dinner at White House”(Gizmodo)、”Shocker: Elon Musk spends a lot of time on X posting bad political takes”(The Verge)。
XでのFred Lambert氏
今回のサンプルで、Electrek自体の見出しには純粋な政治ネタはゼロでした。ところが編集長のXアカウントは話が別です。
1年分から、Fred Lambert氏のテスラまたはマスク関連の投稿105件を分類しました(重複2件を除外後)。ネガティブ85件(81%)、ポジティブ3件、中立17件。うち約28件は技術の話がない政治・マスク氏の私生活に関するもので、そのすべてがネガティブでした。
背景として:2020年にBusiness Insiderが報じたところでは、Lambert氏は約6,000本のテスラ記事のうち約95%が好意的だったと述べていました。2024年9月には、テスラ株をすべて売却し、もうマスク氏を信用していないと書いています。ElectrekのAboutページには、一部のライターがTSLAなどグリーンエネルギー株のロングポジションを保有していると記載されています。
前にも数えた人たちがいる
これをやったのは私たちが初めてではありません。
- CleanTechnica(2018年) は大手30社以上のテスラ見出しを1週間追跡。208本中155本がネガティブ、26本がポジティブでした(CleanTechnica)。
- Weblyzard(2019年) は2カ月分のテスラ報道で、ネガティブ約53%、ポジティブ8%という結果(レポートPDF)。
- 保守系のメディア監視団体 Media Research Center(2025年) は、2025年1〜4月の米テレビ夕方ニュースでのマスク氏の扱いが96%ネガティブだったとしています(Teslaratiの報道)。
正直な限界
- 分類したのは1人。その分類を誰かがダブルチェックしたわけではありません。
- Googleニュースは各サイトの記事をすべて表示するわけではありません。あくまでサンプルです。
- この1年は本当に悪いニュースが多い年でした。死亡事故、リコール、販売減、Grokの画像問題。これらは味付けではなく、悪いニュースとして数えています。
- 見出しだけです。皮肉な見出しの下に公正な記事があることも、その逆もあります。
検証したい方には、見出しの全リストと1本ずつの分類結果をご依頼に応じてお渡しします。
EVXの視点
数字の幅はかなり広いものでした。味付けの少なさでは、ロイターとCNBCがテスラ寄りの比較用サイトに近い位置。反対側の端にいるのがFuturismです。今回のサンプルでは、味付けはテスラの見出しよりマスク氏の政治の見出しで約3倍多く、大手新聞のテスラ報道はおおむねストレートでした。これは日本でも関係のある話です。日本で目にするテスラのニュースの多くは、英語の見出しが翻訳されて広まったもの。どのメディア発の記事かで、第一印象は変わります。まず出どころを確かめて、見出しの先まで読みましょう。
