中国の外商投資安全審査当局が、ソフトバンクグループによるABBロボティクス事業の中国部分の買収を禁止したと、ソフトバンクとABBが相次いで確認した。2025年10月に合意した企業価値53億7,500万ドルの取引自体は協議中だが、買収の核心だった中国事業はテーブルから外れた。
ソフトバンクの11月6日付発表によると、通知を受けたのは11月4日で、相手は中国の「外商投資安全審査工作機制弁公室」。ABBの11月5日付グループ発表も同じ内容で、ソフトバンクから「中国におけるABBロボティクス事業の取得が禁止された」と知らされたと書いている。両社は「建設的に協議している」とし、ソフトバンクが引き続き他国の規制対応を進める。
なぜ中国が大きかったか
ABBのロボット事業にとって中国は脇役ではない。中国向け出荷の大半が現地生産で、上海は世界3大ロボット工場の一つ、研究開発も厚い。澎湃新聞はABBロボティクスの2024年売上を約23億ドル、グループ売上の約7%、営業EBITDAマージン12.1%と整理した。ABBの中国語発表も英語版と一致する。Nikkei AsiaとSCMPは、機微技術案件への北京の介入という枠で報じた。
取引は2026年早い段階で中国の独禁審査を通過したとされる(SCMP・澎湃)。安全審査は別の関門だ。ソフトバンクはOpenAIの大口投資家でもあり、中国側の解説ではロボットのデータと「フィジカルAI」が機微な層だと繰り返し触れられる。孫正義氏が株主向けに使ってきた説明と同じ単語だ。
ソフトバンク自身のソフトバンクロボティクス(Pepperなど)の系譜から見れば、ABB案件は別クラスの機械——産業用アーム、工場ソフト、ライン上のデータ——を取りにいく話だった。中国を失っても欧米のABBロボティクスは残るが、「フィジカルAI」の説明からは穴が開く。投資家が知りたいのは改訂後の境界線で、売上・人員の何割が中国にあり、残りの企業価値をいくらと見積もるかだ。
今年2件目のブロック
SCMPによると、今年中国が公表ベースで止めたAI関連の大型案件は、Metaによる中国AIスタートアップManus買収の巻き戻しに続く2件目。ソフトバンクのABB構想は産業用ロボットと工場データをAI投資に接続するものだった。中国なしでも他国の承認が取れればABBロボティクスは手に入るが、もっとも密度の高い設置ベースと上海工場は失う。
中国を切り分けて再交渉するのか、価格を変えるのか、破談にするのかは両社とも言っていない。ソフトバンクは開示が必要になれば追加発表するとし、ABBの文言もほぼ同じだ。
日本のロボット産業から見ると
ソフトバンクは日本企業だ。ABBロボティクスが加われば、ソフトバンクロボティクスのサービスロボット歴と、孫氏のヒューマノイド/工場AIに並ぶ産業アームの柱になるはずだった——テスラがOptimusの初期生産やCybercabとOptimusの中国ツアーで進めているのと同じ「フィジカルAI」の土俵だ。ファナック、安川、川崎重工など日本の産業用ロボット勢はすでにABBと世界で競っている。中国拠点ごとソフトバンク傘下に入るABBと、上海を欠いたABBでは意味が違う。EVや電池の工場でABBアームを使う日本のサプライヤーにとって、当面は納入先がABBのままか、中国事業が別オーナーになるか、協議の間宙ぶらりんかが実務上の問いだ。
EVXの視点
拒否は北京から来たが、まず日本の話だ。ソフトバンクはAI戦略の核として上位の産業用ロボット事業を買おうとし、中国は現地工場とデータに線を引いた。日本のロボットメーカーにソフトバンクのつまずきは不要だが、ABB中国の設置ベースの持ち主が誰かははっきりさせたい。いまABBアームを買う日本のEV・電池工場——10月の登録BEV台数が示すように床はすでに混んでいる——にとって一夜で変わることはない。ただ「建設的な協議」が続くほど、戦略産業としての不透明さも続く。
出典:ソフトバンクグループ発表(2026年11月6日);ABBグループ発表(11月5日);ABB中国語発表;澎湃新聞;Nikkei Asia;SCMP;VOA中国語。
— EVX News編集部
アイキャッチ:展示されたASEA/ABBの産業用ロボット。写真:Dependability/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0、トリミング・リサイズあり)。
