テスラの人型ロボット「オプティマス」は、フリーモント工場でイーロン・マスク氏いわく「初期生産」の段階に入った。その証拠もまもなく見せたいらしい。10月22日(木)朝(日本時間)の第3四半期決算説明会で、マスク氏は新しいオプティマス動画が「1〜2か月」以内に出る可能性があること、AI5チップを2027年4月ごろにロボットへ搭載すること、そして社外企業への出荷が来年末ごろに始まる見通しであることを語った。
株主向け資料にはすでに、フリーモントの量産ラインでオプティマスの生産を始めたと書かれていた(第3四半期決算の記事参照)。説明会で加わったのはスケジュールと、これがどれだけ難しいかについてのかなり率直な話だ。
「うまくいかなきゃならないことが1万個ある」
説明会の書き起こしによると、マスク氏は「年産100万台規模の生産ラインの大部分は、いまフリーモントに据え付けてある」と述べた。そこからの立ち上げは別の話で、「その年率、つまり週2万台に届くまで少なくとも1年、たぶんもう少しかかる」という。
期待値を調整したい人には、続く説明が一番役に立った。量産の立ち上がりはS字カーブで、最初の傾きは「緩やか」。しかも「まったく新しい製品なので、多少でこぼこする」。ロボットの生産には「うまくいかなきゃならないことが1万個あって、その中で一番遅く、一番運の悪いものと同じ速さでしか進まない」。設計もまだ終わっていない。ロボットは「安全で信頼性が高く、長持ちしなければならない。1か月で壊れるようでは困る」とマスク氏。
Drive Tesla Canadaも週2万台という数字を見出しに取り、フリーモントの旧モデルS/Xラインを46日で撤去してオプティマス用のスペースを空けたことを伝えている。ヴァイバヴ・タネジャCFOは、フリーモントより「はるかに多くのロボットを作れる」オプティマス工場をオースティンで建設し始めたことも明かした。
やっぱり難しいのは「手」
ドイツ銀行のアナリストが、設計変更がまだ続いている部分はどこかと尋ねると、答えは明快だった。「ほとんどは手。手の設計、特に指の微調整だ」。人間の体は自分で治るが、ロボットは治らない。手は延々と続く摩耗に耐え、「繊細なものをつまめる程度に柔らかく」、繰り返し使ってもセンサーが生きていなければならない。説明会に出たオプティマスのエンジニアは、それ以外の電気機械系はほぼ「十分うまく動くところまで収束した」とし、手といくつかの「専用ギア」はまだ開発中だと話した。
テスラは完璧な手を待つつもりはない。「手が完成していないロボットを作っている」とマスク氏。それを使ってAIの学習とサプライチェーンの洗い出しを同時に進めるという。
「信じられる」動画、そしてAI5
マスク氏はネットで出回っている人型ロボットのデモにも一言。「すごく見えるものもあるが、高度なAIはほとんど使っていない。あらかじめプログラムされた決まった動きだ」。次のオプティマス動画では「プログラムされていないこと」をするロボットを見せるつもりで、時期は「たぶん1〜2か月」としている。
ハードウェアの大きな節目はAI5だ。次世代チップのオプティマスへの統合は「来年4月ごろ」を目指し、AI4より「1桁多い演算能力」になるという。マスク氏によれば、人型ロボットは自由度がはるかに大きく「クルマの1000倍のことをする」ので、クルマ以上にこのチップを必要としている。
学習はまた別の難題だ。クルマは数百万台の顧客車両からデータを集められるが、オプティマスにはそんな車隊がない。そこでテスラは「1万〜2万体規模」のロボットを作り、社内の「オプティマス・アカデミー」で自己対戦(セルフプレイ)を通じて学ばせる計画だ。マスク氏はこれを、だんだん足取りがしっかりしてくる幼児にたとえた。子育て経験者ならピンとくる例えも出たが、ここでは省略する。
社外への出荷は2027年末ごろ
手、信頼性、AIソフト、AI5の統合がそろうのは「来年末ごろ」で、それが「テスラ以外の企業にオプティマスを届け始める時期」だとマスク氏は見ている。最初の仕事は産業用途、「危険で単調な、基本的に24時間やってほしい作業」だ。家庭用ロボットは生産が増えてから。
1台あたりのコストと最初の有料顧客については、Not a Tesla Appが説明会前の予習記事で、株主の上位質問に入っていると指摘していた。タネジャ氏の答えは、オプティマスのコストは「サイバーキャブの最終的なコストに近づいている」というもの。テスラが以前示したサイバーキャブの約3万ドル(約450万円)と並べて覚えておきたい比較だ。将来のロボットのチップは、テスラ自前の「テラファブ」から来るかもしれない。マスク氏によると、オースティンの研究用ファブは2027年前半に装置の立ち上げを始め、「5月か6月ごろ」に最初のテストチップ、2028年第3四半期ごろに実用的なチップの量産を目指す。
ライバルの様子では、Figureのロボットが最近トレッドミルで348マイル(約560km)歩いた。ほかの顔ぶれは人型ロボットまとめにある。それでもマスク氏の見方は変わらない。「顧客への出荷を始めたとき、オプティマスと少しでも勝負になるロボットを誰かが持っていたら仰天する」。次のチェックポイントは動画。期限は自分で約2か月と切っている。
出典:テスラ第3四半期決算説明会の書き起こし(Quartr/Stock Analysis)、Drive Tesla Canada、Not a Tesla App(決算説明会の予習)、Teslarati(第3四半期アップデート)、テスラ公式X、Sawyer Merritt(X)
— EVX News 編集部
アイキャッチ画像:ストックホルムで展示されたテスラ・オプティマス。撮影:Ulf Klingström(Ulkl)/Wikimedia Commons(パブリックドメイン、トリミング)。
