テスラが自前の地図づくりに乗り出します。しかも描くのはAIです。10月22日(木)午前6時30分(日本時間)/米東部時間21日午後5時30分に始まった2026年第3四半期の決算説明会で、AI部門を率いるアショク・エルスワミー氏が「外部の地図に頼るべきではない」と明言。「AIベースの地図とナビゲーションによる、まったく新しいアーキテクチャ」を開発中だと語りました。第一弾はFSD V15で登場予定。日本のテスラオーナーの皆さん、いま遠くで鐘が鳴りましたよね。
まずは現実から。テスラは「走るスマホ」と呼ばれますが、日本の純正ナビの評判は、正直あまり褒められたものではありません。国内最大級のオーナーコミュニティテスカスには何年も前から声が並んでいます。「変なルートを案内されることが多い」という投稿があれば、名古屋から中部国際空港(セントレア)へのルートが見つからず、知多半島道路のインターやジャンクションを認識していないようだという報告も。東京・大井町では、Googleマップがすでにルートに入れている開通済みのトンネルをテスラのナビだけが頑なに避け、「単にナビデータが古いだけでは」という結論に至った人もいました。
昔話でもありません。2026年4月のスレッドでは、標識は時速60キロなのに地図上は旧40キロ・50キロ制限のままの道路があるという指摘や、地図更新がバージョン番号だけ変わって中身の説明がゼロ、というぼやきも。番地のない場所に自宅や勤務先のピンを置いても、翌日には近くの番地付き住所に戻ってしまうそうです。通りの名前で住所が決まらない日本では、なかなか味わい深い仕様です。今月にはテスラ系ブロガーの@Lowcarb_Styleさんが、オーナーなら一度は画面に向かって叫んだ疑問をXに投稿しました。画面のGoogleマップには新しい高速道路が映っているのに、なぜナビは遠回りを指示するのか。答えは、表示用のGoogleマップと車載オフライン地図の「二層構造」だから、とのこと。
極めつけはこちら。今月、オーナーの@sono106さんが「やりやがったな⁉️」のひと言とともに写真を2枚投稿しました。1枚目は夜、ボンネット越しに見たフェンスと草に挟まれた細い舗装路で、真ん中には車止めの紅白ポール。2枚目はナビ画面で、青いルート線が国道45号からジョイス大槌店の近くで分かれ、まさにその細道へ入っていきます。車止めがある時点で「クルマはお断り」の意味のはずですが、ナビには近道に見えたようです。度胸だけは満点です。
フォローしておくと、今の地図も進化はしています。7月に配信されたナビデータ「JP-2026.20」では、車線案内が県道レベルや都内の大通り、一般的な交差点まで大きく広がったとTouch Labが伝えています。オーナーには大好評でした。とはいえ、それは他社の地図への上乗せ。アショク氏が語ったのは、まったく別の話です。
アショク氏の発言
質問は株主投票サービスSayから。地図の問題は「依然として続いている」とし、制限速度、駐車、普段のルートを三大課題に挙げたうえで、なぜ自社の地図を使わないのかと問うものでした。アショク氏は即答。説明会の書き起こしによると、「おっしゃる通り、外部の地図に頼るべきではありません。私たちは独自の地図をつくっていますが、OpenStreetMapのようなやり方ではありません」と述べました。
ボランティアが道をなぞる方式ではない、ということです。新システムは音声と統合され、話しかけて別ルートを頼めるようになり、「個人の好みに加えて、フリート全体の傾向も学習する」とのこと。そして一番のポイントがこちら。「すべてのクルマの集合知が、地図とナビゲーションづくりに流れ込む」。
これがAIの部分で、従来の地図づくりとは真逆の発想です。データベースを買って次の更新を何カ月も待つのではなく、道を走るテスラ一台一台が測量士になる。新しいトンネルも、新しい60キロ標識も、実は裏手にある駐車場の入り口も、何百万台ものクルマが見ています。(フリートのデータがいつ日本の道路に反映されるのか、日本独特の住所体系にどう対応するのかについて、テスラはまだ説明していません。V15で確かめたいところです。)
いつ来るのか
アショク氏によると、「トリップの始まりと終わり」では「V15リリースの一部として、もうすぐ」この技術が使われ始め、その後の数カ月で「ナビゲーション機能、駐車、目的地の扱いをすべて引き継ぐ」。さらに運転に関しては「ある意味、あなた自身よりあなたのことを分かるようになる」とまで。具体的な日付は示されず、TeslaNorthのまとめも同じスケジュール感を伝えています。
流れはできていました。今月初めにはNot a Tesla Appが北米向け地図更新(NA-2026.38)の異例の早さを報じ、テスラのAIエンジニアが「妙な裏道への迂回」をやめて好みのルートを学ぶ、賢いFSDルーティングを改めて予告していたと伝えています。説明会ではほかにもFSD関連の話題が満載で、Drive Tesla Canadaや当サイトの第3四半期決算記事で詳しく扱っています。ヴァイバヴ・タネジャCFOによると、北米では納車の75%超で有料FSDの申し込みがあったとのこと。日本にとっての本題は、やはり認可です。テスラジャパンのトップはFSDの国内導入に言及しており、テスラのロボタクシー安全データは規制当局が読みたくなる数字でしょう。
れすちゃんのひとこと
モデルY(ジュニパー)、大好きです。FSDも4回買いました。愛なのか病なのか、自分でもよく分かりません。でも日本のテスラの地図は、ずっと「親戚のおじさんが2019年に買ったガイドブック」みたいな雰囲気でした。そこへアショクさんが「あなたよりあなたを分かる地図」と来ました。大きく出ましたね。こっちはラーメン屋ひとつ決めるのにも迷う人間ですよ。何百万台ものテスラが、大井町のトンネルは開通してるよ、60は60だよ、日本の住所はピンじゃなくてなぞなぞだよ、とナビに教えてくれるなら、自販機と口論して負けた人みたいにクルマに話しかけるくらい、喜んでやります。V15、準備オッケーです。そして地図が日本を覚えたら、その上にFSDが乗ったら最高だと思いませんか。言ってみただけです。
出典:テスラ2026年第3四半期決算説明会 書き起こし(Quartr/Stock Analysis)、Not a Tesla App、Drive Tesla Canada、TeslaNorth、Touch Lab、テスカス、@Lowcarb_Style(X)、@sono106(X)
— れすちゃん(EVX News)
アイキャッチ画像:国道16号周辺を表示したテスラのナビ(航空写真マップ)。写真:れすちゃん / EVX News
