米メンフィスにあるスペースXのAIデータセンター「Colossus 2(コロッサス2)」で、次に稼働する2棟のスーパーコンピューターに名前がつきました。その名も「Gun Range(射撃場)」と「Spam(スパム)」。イーロン・マスク氏によると、Gun RangeはNvidia GB300を22万基積んだ学習(トレーニング)用で11月末までに稼働、Spamは約20万基のGB300を積んだ推論用で12月に稼働する予定です。
マスク氏が明かしたのは11月1日(日)午前2時45分(日本時間)/米東部時間10月31日(土)午後1時45分。現地を紹介した動画へのXでの返信でした。「MacroharderとMinihardはどちらも800ギガのNIC付きGB300を22万基、学習向けの構成で積んでいる。Gun Rangeも同じ。Spam(以前はホーメルの製品を保管していた建物)はGB300が約20万基だが推論向けの構成なので、ネットワークはずっと単純で、光ファイバーも半分以下で済む」。
さらに「真夜中と今朝、Colossus 2の敷地を全部歩いて回った」とし、Gun Rangeは「11月末の稼働に向けて順調、Spamは12月」と書いています。約30分後には拠点全体の数字も出しました。「年末までにColossus 2には合計で約120万基のBlackwellが入る」。
名前は本当にそのまま
Gun Rangeはたとえ話ではありません。「文字どおり、地元警察の射撃場を買い取ったんだ」とマスク氏は笑いの絵文字付きで投稿。Spamは、あの缶詰肉で知られる米ホーメルの製品を保管していた元倉庫です。マスク氏いわく「Spamがスパムを出しすぎないといいけど!」。推論クラスターの仕事はまさに文章を次々に生成することなので、メールの受信箱を毎日見ている人にはちょっと笑えないジョークです。
新しい2棟は、すでにGB300を各22万基積んでいるというMacroharderとMinihardに加わります。4棟を足すと約86万基で、この合計はXアカウントのXFreezeが投稿し、マスク氏が返信したものです。ソーヤー・メリット氏は、新しい2棟だけで350億ドル(約5.5兆円)超のGPUになると見積もっています。これは同氏の推計で、スペースXの数字ではありません。
学習と推論で建物を分ける理由
ここが今回の本当の新情報です。これまでColossusは主にチップの数で語られてきましたが、マスク氏は拠点を「用途」で分け始めました。
大規模モデルの学習では、何千ものチップが絶えずデータをやり取りするため、どのGPUにも太くて速い接続が必要です。それが「800ギガのNIC」の部分。NvidiaのGB300 NVL72は、Blackwell Ultra GPUごとに800Gb/sのConnectX-8ネットワークを組み合わせています。一方の推論、つまり学習済みのモデルでユーザーの質問に答える処理では、チップ同士の通信はそこまで要りません。「光ファイバーは半分以下」という発言はその実務的な結果で、ケーブルが減り、スイッチが単純になり、早く建てられます。
FourWeekMBAの計算では、名前の出た4棟・約86万基のうち推論用は約23%。需要の向かう先が見えます。スペースXは外部のAI開発企業に計算資源を貸し出していて、マスク氏は自社利用と貸し出しがおおむね半々だと説明している、とTeslaNorthは伝えています。貸し出し分もGrokも、モデルが完成したあとは推論用のハードが必要です。
確かなこと、まだわからないこと
ここに出てくる数字はすべてマスク氏の投稿によるもので、スペースXの開示資料やNvidiaの発表ではありません。Gun RangeとSpamにすでに何基入っているのか、電力がどれだけ必要か、「GB300」と「Blackwell」を同じ数え方で数えているのかも、投稿には書かれていません。4棟の約86万基と、全体の120万基の差の説明もなし。拠点内のほかの場所にある旧型のBlackwellシステムを含んでいる可能性があります。
120万基という目標自体は新しくありません。マスク氏は9月に、12月下旬までに121万基を目指すと話していて、EVXでもスペースXがGPU購入の400億ドル(約6.3兆円)借り入れを完了した記事で取り上げました。その際、借り入れで買うGPUの大半は2027年前半に届くとも話しており、年末の数字と借り入れ分の増強は別の段階です。今回わかったのは、建物ごとのスケジュールと、学習用と推論用の初めてのはっきりした区分けです。
EVXの視点
比較のために言うと、日本の代表的な公的AIスーパーコンピューター、産総研のABCI 3.0が積むのはNvidia H200が6,128基。Gun Rangeは1棟だけで、その約36倍のGPUを、しかも新しい世代で、元警察の射撃場に並べる計画です。日本にとっての本題はこの差です。国内のAI開発者は、同じ規模を国内でそろえるより、こうした海外の計算資源を借りる流れが続くでしょう。一方で、Blackwellが組み上がるたびに得をする日本企業もあります。NvidiaのAIチップを検査するテスターを手がけ、EVXの株価ウォッチでもおなじみのアドバンテストがその代表です。Gun RangeとSpamが11月・12月の予定どおりに動けば、その需要はスペースXの開示より先に、東京の半導体株に表れるはずです。
最初の答え合わせはすぐです。11月末まであと4週間。マスク氏はGun Rangeに公の締め切りを自分で設定しました。
出典:イーロン・マスク氏のX投稿(クラスター構成、合計120万基、Gun Rangeの名前、Spam)、ソーヤー・メリット氏のX投稿、TeslaNorth、FourWeekMBA、AI Industry Today、Nvidia(GB300 NVL72)、ABCI 3.0(産総研)。
— EVX News編集部
アイキャッチ画像:サーバーラックに収まったNvidia DGX B200(Blackwell GPU搭載)。Colossus 2の写真ではありません。写真:Javils00 / Wikimedia Commons(CC0、トリミングあり)。
