テスラがオーストラリア上院に対し、国の自動運転法の施行を「2029年見込み」から2年前倒しして2027年にするよう働きかけるとともに、法律が整うまでのあいだ2027年に公道での自動運転トライアルを認めるよう求めました。テスラ・モーターズ・オーストラリアが上院「オーストラリアの生産性に関する特別委員会」に出した意見書で、8つある提言の最後の2つがこの内容です。
意見書は「Submission 258」、日付は10月16日。先週、委員会のウェブサイトで公開されました。全8ページの大半は充電器、トラック、燃料クレジット、走行距離課金の話で、自動運転のパートは短め。そのぶん、言い方はかなりストレートです。
「オーストラリアの自動運転車の規制枠組みは、2016年に国家運輸委員会(NTC)が初めて提案したものだ。現在も全国的な枠組みづくりはバラバラで、時期の見通しも立たないままだ」とテスラは書いています。
テスラの2つの要望
提言7は目先の話です。連邦政府に対し「2027年の自動運転トライアルを支援し、全国的な規制枠組みが整うまでのあいだ、業界と協力して公道でのトライアルを可能にする許可を出す」よう求めています。要するに、ルールブックが完成する前でも、許可制で実際の道路を走らせてほしいということです。
提言8はルールブックそのもの、つまり検討中の「自動運転車安全法(AVSL)」が対象です。州・準州と協力し、連邦と州の調整や技術基準づくりを効率化して、AVSLを「優先し、加速する」よう求めました。テスラによると、施行を「わずか2年」早めるだけで「数百人の命を救い、数千件のけがを防ぐだけでなく、安全・生産性・環境・経済の面で100億豪ドル(約1.1兆円)超の効果」が生まれるといいます。この数字はテスラではなく、オーストラリア自動運転車協会(AVAA)の試算です。テスラはさらに、完全に普及すれば自動運転車で年間最大800人の命を救えるという連邦政府自身の推計も引用しています。
背景には、2025年にオーストラリアの交通事故死者数が15年ぶりの高水準になったという事情があり、テスラもこの点を自動運転パートの冒頭に書いています。
豪州発のFSDデータ
根拠として、テスラは現地ですでに販売しているシステムを挙げました。FSD(Supervised)は2025年9月にオーストラリアとニュージーランドで提供が始まり、それ以降、FSDを有効にした状態での走行距離は1億6,000万km超。FSDを使わないテスラ車と比べると、FSD(Supervised)使用時は衝突が40%、急ブレーキが90%、急加速が86%少なかったとしています。
ただし、これはテスラ自身の数字で、算出方法や対象期間は意見書に書かれていない、と現地メディアのtechAUは指摘しています。テスラ自身も製品の位置づけには慎重で、FSD(Supervised)は「ドライバーが常に車両を適切に制御する必要があるSAEレベル2の運転支援システム」として現地の法令に適合している、と明記。安全データはあくまで監視付きシステムのもので、テスラが求めるトライアルはその先、運転席に責任者がいないクルマの話です。テスラが米国でどんな形で安全データを出しているかは、最新のFSD安全レポートの記事をどうぞ。
豪州のルールはいまどこまで来ているか
テスラの主張の核心は「2029年」という日付ですが、これが公的な文書ではなかなか見つかりません。techAUも探したものの見つからなかったそうです。記録から見えるのは、目標が何度も後ろにずれてきた歴史です。交通相会合は2017年、2020年までに一貫した制度を整える目標を掲げ、NTCの2022年の政策文書では「2026年末までに枠組みを実施」となっていました。
直近で確定している決定は、2025年11月21日のインフラ・交通相会合のものです。各州・準州の体制次第としつつ、「第一段階として2027年から特定の地域で自動運転車の条件付き導入」を認め、全国的な体制は「その後できるだけ早く」整えることで合意しました。つまり、限定的な導入なら2027年はすでに公式カレンダーに載っています。公表されていないのは、AVSLそのものが全国で施行される時期。テスラの言う2029年は、意見書にもある当局者との協議から来ている可能性があります。
今のところ、審議でテスラに反対する声は出ていません。techAUが開ける範囲の他の意見書を調べたところ、公道の自動運転に触れたものは少なく、2027年開始に反対するものはゼロでした。EV Selectによると、委員会の公聴会は11月30日と12月4日に予定されています。
テスラが豪州にこだわる理由
オーストラリアはテスラにとって本物の市場です。意見書によると、2023年以降に現地で納車したクルマは15万1,000台超。国内最大の公共超急速充電網(120kW以上)を運営し、160か所・1,000基以上を構えています。Information Ageによると、テスラは現地のショールームでCybercabを巡回展示していますが、ハンドルもペダルもないこのクルマは、人間のドライバーを前提とする現地の法律のもとでは公道を走れません。テキサスではテスラのロボタクシー登録台数が1,200台を突破したばかり。同じクルマが、豪州のショールームでは超高価な記念撮影スポットです。この意見書はDrive Tesla CanadaやAutotalkも報じています。
EVXの視点
テスラが豪州に求めていることを、日本はすでにやっています。改正道路交通法により、日本では2023年4月から許可制でレベル4の無人運転が可能になり、国土交通省によると、政府は2027年度までに100か所以上で無人自動運転移動サービスを実現する目標を掲げています。ただ、許可の多くは低速・決まったルートのシャトル向け。だからこそ、Waymoとトヨタが2027年に日本で走らせる無人bZ4Xのほうが、法律の条文より意味を持ちます。テスラの日本での取り組みは豪州より一歩遅れていて、2025年8月から国内の公道でFSD(Supervised)のテスト走行を続けているものの、一般ユーザーへの提供はまだです。もしキャンベラが2027年のトライアルを認めれば、テスラは右ハンドル・左側通行という日本とそっくりな道路環境でデータを集められます。日本での展開にもそのまま役立つはずです。
次は公聴会です。上院が提言7を取り上げれば、最初の許可が出るのは2027年。日本の「100か所」目標の期限と同じ年です。
出典:テスラ・モーターズ・オーストラリア意見書(Submission 258)、豪上院・生産性特別委員会、インフラ・交通相会合声明(2025年11月21日)、豪国家運輸委員会(NTC)、Drive Tesla Canada、techAU、Information Age(ACS)、EV Select、Autotalk、国土交通省、Tesla Japan(PR TIMES)。
— EVX News編集部
アイキャッチ画像:西オーストラリア州ノース・クージーのV3スーパーチャージャーで充電するテスラModel Y(2026年8月)。写真:Leesieoh / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0、トリミングあり)。
