SpaceXの月着陸船の「中身」が、ついに公開された。NASAはケネディ宇宙センターで開いた「アルテミス・アクセラレーション」説明会で、SpaceXがテキサス州スターベースの工場「スターファクトリー」で組み立てている有人月着陸船スターシップHLSの居住区「キャビン1」の写真を初めて公開した。2028年の有人着陸までにSpaceXがこなすべき課題を四半期ごとに並べた最新の工程表も示している。
説明会は日本時間10月24日(土)午前3時(米東部時間23日午後2時)から。登壇したのはジャレッド・アイザックマンNASA長官、アミット・クシャトリヤ副長官、アルテミス計画マネージャーのジェレミー・パーソンズ氏だ。
キャビン1の中
狭くて、とにかく白い。TeslaNorthによると、1枚目は明るく照らされた細長い部屋で、白いクッション張りの壁に木目調の天井パネル、固定用ストラップの付いたベッドのようなものが見える。2枚目はスターシップのステンレス製の外殻に並んで開けられた窓、3枚目は内装を組み付ける作業員の姿だ。アルテミス3号で使うドッキングアダプターの新しいCGも公開され、ソーヤー・メリット氏がさっそくXに投稿している。これまで一般の人が見られたのは、ほぼCGと実物大模型だけ。SpaceXは昨年、着陸船の開発で49のマイルストーンを達成したと発表していたが、その多くもCGで紹介されていた。
これからの工程表
説明会で示されたNASAの「SpaceX開発マイルストーン」の主な中身は次のとおり。
- 2026年10〜12月期:キャビン1の完成
- 2027年1〜3月期:宇宙船どうしの推進剤移送デモ、キャビン1の運用試験
- 2027年4〜6月期:着陸脚のデモ、キャビン1のエアロックのデモ、アルテミス3号用の機体をはしけでフロリダへ
- 2027年7〜9月期:アルテミス3号ミッション、無人のタンカー機のデモ飛行
- 2027年後半:無人での月面着陸
- 2028年:アルテミス4号で有人着陸
もっとも、四半期ごとの工程表そのものは10月5日の国際宇宙会議(IAC)ですでに出ていたとSpace.comが伝えている。今回の目玉は、実物のハードウェアのほうだ。アルテミス4号でのSpaceX着陸船の運用構想図も新たに示された。
パーソンズ氏は燃料補給の試験についても説明した。使うのはスターシップ2機で、1機はフロリダの39A発射台から、もう1機はスターベースから打ち上げる。ブースターと宇宙船の両方をキャッチする予定の飛行試験15回目は、ラプターエンジンを改良して11月に実施する見込みで、フロリダからの初のスターシップ打ち上げもその数か月後に続くという。
タンカーは何機必要?
誰もが知りたかったのはこの数字だ。前日のNASA航空宇宙安全諮問委員会(ASAP)で、元宇宙飛行士のチャーリー・プリコート氏は、アルテミス4号の着陸船の燃料補給について「最新の見積もりは約22回の飛行」と発言したとArs Technicaが報じた。イーロン・マスク氏はXで「多すぎる。実際は6〜8回くらいになる」と返している。
金曜の説明会で、パーソンズ氏はそのあいだを取るような答え方をした。2027年初めの移送デモで多くのことがわかり、効率が上がればタンカーの数は「1桁台の後半」に近づくはずだという。アイザックマン長官は、打ち上げ頻度を2週間に1回から毎週へ上げ、低軌道に運べる質量も増やせば、回数はさらに減ると付け加えた。SpaceXは決算説明会で2027年にスターシップを毎週打ち上げる目標を示しており、FAAは年456回の打ち上げ計画の審査を進めている。毎週ロケットが飛ぶなら、タンカーの計算もずいぶん怖くなくなる。
アルテミス3号は着陸しない
2月の計画見直し以降の流れをおさらいしておくと、2027年半ばのアルテミス3号では4人の宇宙飛行士が地球低軌道にとどまり、オリオン宇宙船がSpaceXとブルーオリジン両社の試験用着陸船とランデブーする。SpaceX側の機体は先端にドッキング装置を付けたスターシップV3で、NASAのミッションページによれば乗員は中に入らない。つまりキャビン1の出番はアルテミス4号以降で、技術者には試験用の実機、宇宙飛行士にはリアルな訓練の場になる。アルテミス4号の乗員をどちらの着陸船で運ぶかはまだ決めていない、とアイザックマン長官は話した。
この選択は日本にも無関係ではない。2024年のNASAとの合意で、日本は与圧ローバーを提供し、今後のアルテミス計画で日本人宇宙飛行士2人が月面に降り立つことになっている。月面へ降りる手段は、この2つのアメリカ製着陸船しかない。日本人が初めて訓練する月着陸船は、このキャビン1になるかもしれない。
出典:NASA(X、説明会)、TeslaNorth、Space.com、Ars Technica、Florida Today、NASAメディア向け案内、ソーヤー・メリット氏(X)
— EVX News 編集部
アイキャッチ画像:テキサス州スターベースのスターファクトリーで建造中の、SpaceXスターシップ月着陸船の居住区「キャビン1」の内部。画像:NASA/SpaceX(2026年10月23日のNASAアルテミス・アクセラレーション説明会より、スライドの文字部分をトリミング)
