ハンドルもブレーキペダルもない自動運転車を、1台ずつではなく共通のルールでまとめて認定する。国土交通省がそんな方向で検討していると、日本経済新聞が11月2日に報じました。対象はレベル4とレベル5の自動運転車で、見直した保安基準を12月から適用する方針。狙いははっきりしていて、ロボタクシーを量産しやすくすることです。
日経の記事は日本時間11月2日午後5時(米東部時間同日午前3時/米西部時間同日午前0時)の配信。国交省は、基準を満たせばハンドルやブレーキペダルのない車両を「一律に」認定する方向で検討しているといいます。これまでは安全性を個別に審査してきました。案は4日(水)の同省の車両安全対策検討会で議論される見通しです。
何が変わるのか
いまの保安基準は、運転席に人が座っていることが前提です。国交省の有識者検討会も、2025年3月の報告書でこの点をはっきり書いています。運転者席や従来のハンドル・ペダルのない「ドライバーレス車両」を走らせるには、保安基準第55条に基づく基準緩和の認定を個別に受ける必要がある。今後の普及を考えれば、基準緩和で1台ずつ対応するのではなく、保安基準そのものをドライバーレス車両に対応させるべきだ、という内容でした。
日経が「12月から」と報じたのは、まさにこの見直しです。日経の報道をまとめたEVwireによると、新しいルールで認定された車両には、ハンドル、ペダル、バックミラー、ドライバーモニタリングシステム(DMS)が不要になります。部品代が減り、車内のシート配置も自由になります。一方、タクシーやバスなど人を乗せる車両では、ダミー人形を使った衝突試験は引き続き必要。無人の貨物車両は試験の対象外です。どちらも、システムが故障したときに事故を避けられる仕組みは求められます。
国交省の担当者は日経に、量産を後押しして普及目標の達成につなげたいと話しています。日経によると目標は、2030年度までにレベル4に対応したバスやタクシーなど約1万台。ただし国交省はまだ見直しそのものを発表していないので、12月という時期や細かい中身は、いまのところ日経の報道ベースです。
4日の検討会と「L2++」
検討会の開催は公式に決まっています。国交省の報道発表によると、令和8年度第2回車両安全対策検討会は11月4日(水)午後2時〜4時30分(米東部時間4日午前0時〜2時30分/米西部時間3日午後9時〜11時30分)。議事のひとつが「安全な自動運転車の普及に向けた対策の方向性」で、ハンドルなし車両の話はここに入るとみられます。
あまり注目されていないもうひとつの議事が、「L2++優良認定制度検討WGの設置について」です。SDV Sectorが指摘するように、発表資料にはL2++の定義がありません。業界では、L2+やL2++は一般道も含めて移動の多くをこなし、人が監視する高度な運転支援を指すことが多い言葉です。FSD(Supervised)もこの分類に入ります。最低基準を決めるのではなく、その上の性能を評価する「優良認定」は、日本にとって新しい仕組みになりそうです。会議は非公開で、資料は原則として会議後にホームページで公開されます。
なぜ12月なのか
時期は国際ルールの動きと重なります。2026年6月24日、国連欧州経済委員会(UNECE)の自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)が、完全自動運転車を認める初の国際ルールとして、自動運転システムに関する国連規則を採択しました(UN News)。日本はWP.29の協定の主要メンバーで、国内基準を国際基準に合わせていくのが通例です。米国はこの相互承認の仕組みに入っておらず、独自にルールを作っています。米NHTSAも最近、ハンドルのない無人車両向けの灯火ルールを提案しました(関連記事)。
恩恵がいちばん分かりやすいのは、最初からハンドルのない車を作っている会社です。テスラのCybercabはハンドルもペダルもなく、テキサスのロボタクシーサービスで乗客を乗せています。9月には東京・大阪・名古屋を回る「Cybercab Japan Tour」で日本にも来ましたが、ロイターは当時、国内展開は未定と伝えています。Waymoは2027年からトヨタbZ4Xベースのレベル4車両で日本でのテストを始める予定で(関連記事)、こちらはハンドル付きのままです。
EVXの視点
ロボタクシーのために日本がいまできることの中で、これはいちばん効く一手だと思います。しかも中身はほぼ書類の話です。個別の基準緩和は、ひとつの町で走る実証シャトルなら回ります。でも、同じ車を何千台も作って東京や大阪のタクシー会社に売りたいメーカーには向きません。ティアフォーのような自動運転ベンチャーや大手部品メーカーにとっても、交渉ではなく明確な目標ができます。テスラにとっては、ハンドルの件はCybercabに関わる話ですが、L2++のWGのほうが大きいかもしれません。日本にはFSD対応のハードウェアを積んだテスラに乗って、ずっと待っているオーナーがたくさんいます。もしこのWGがFSD(Supervised)が通れる評価の仕組みを作るなら、それが日本での承認への道になる可能性があります。4日の資料が公開されたら、すぐに読み込みます。
出典:日本経済新聞、EVwire、国土交通省 報道発表(10月30日)、国土交通省「自動運転車の安全性能確保策に関する検討会報告書」(2025年3月、PDF)、SDV Sector、UNECE、UN News、Tesla Japan(PR TIMES)、ロイター。
— EVX News編集部
アイキャッチ画像:高輪ゲートウェイシティのJR・KDDIのロゴ入り自動運転バス(2026年4月)。運転席があり、オペレーターが乗っています。写真:番記者/Wikimedia Commons(CC0、トリミングあり)
