AIブームを動かしているのは半導体。でも、電気が来なければどんな高性能チップもただの板です。
台湾のある電力会社は、むしろ電気のほうが大事だと考えているようです。Apollo Powerはテスラのメガパック2XLを260台、約1GWh分の蓄電容量を発注しました。AIデータセンターや工場を止めないためです。
契約の内容
台湾証券取引所への届け出によると、Apollo Powerは10月8日にテスラ・エナジー台湾と契約を結びました。TeslaratiとDrive Tesla Canadaが伝えた内容は次のとおりです。
- メガパック2XLを260台、容量は約1GWh。
- 用途は需要家側(ビハインド・ザ・メーター)の蓄電と電力網の強靭化プロジェクト。
- 納入は2027年後半から順次、各サイトの稼働は2028年。
- 金額は守秘義務を理由に非公開。Apollo Powerは現金増資と銀行融資で資金を調達します。
需要に先回りして供給を確保
これは260件の完成したプロジェクトではなく、供給枠の予約です。両メディアが引用した現地報道によると、署名済みの顧客契約でカバーされているのは約33台で、さらに約150台分が交渉中。Apollo Powerの会長は現地メディアに対し、大型蓄電池の世界的な供給が逼迫しているため早めに確保したと語っています。顧客が1年以上前から予約を入れるというのは、メガパックの需要が供給を上回っているいいサインです。
パイロットから4カ月で1GWhへ
今回の発注は、Phison(群聯電子)の竹南工場でのパイロットプロジェクトから生まれました。Apollo Powerとテスラ・エナジー台湾は6月、ここにグリッドフォーミング型のメガパック2XLを設置しています。テスラ・エナジー台湾の孫暁涵ゼネラルマネージャーは、このプロジェクトが「4カ月でデモから1GWhへ」進んだと語り、テスラ・エナジーが世界で50GWh以上を導入していることにも触れました。Apollo Powerはその後、Phison、ギガバイト、士林電機とAIデータセンター・電力網強靭化の連合を結成しています。
政策も追い風です。Teslaratiによると、台湾の行政院は、大口の電力需要家に自前の発電設備と蓄電設備の設置を義務づける改正案を承認しました。これにより、敷地内の蓄電池に制度面での後押しが生まれます。
メガパックはAIインフラになりつつある
これは単発の話ではありません。メガパックはすでに、メンフィスにあるxAIのスーパーコンピューター「Colossus」や、ブラジルの400MW規模のAIキャンパスを支えています。Drive Tesla Canadaによると、SpaceXも米国で拡大するコンピューティング事業のために数億ドル分を購入しました。Teslaratiは、メガパック2XLがAIファクトリー向け蓄電池としてNvidiaの「DSX Ready」認定を最初に受けた製品のひとつだとも報じています。テスラの新製品「メガブロック」は1GWhを20営業日で稼働させることを目指しており、データセンターの建設スケジュールに合わせた、わかりやすい売り込みです。
サステナビリティの観点から
データセンターは24時間電力を必要とし、容量を手早く増やす方法といえば、これまではガスタービンでした。大型蓄電池はその構図を変えます。安い太陽光や風力の電気をため、需要のピークをまかない、電力網が乱れても稼働を続けられるので、AIの拡大に必要な新しい化石燃料発電を減らせます。台湾はエネルギーの大半を輸入に頼っているため、再生可能エネルギーをより有効に使える蓄電池は、1GWhごとに気候目標とエネルギー安全保障の両方に貢献します。
EVX Newsの視点
テスラの蓄電事業は、急いで、しかも確実に電力がほしい顧客を次々とつかんでいます。AI時代、そのリストは長くなる一方。納入が1年以上先なのに1GWhを押さえにくるのは、メガパックがそれだけ取り合いになっている証拠です。見た目はただの箱。でも、テスラでいま最も勢いのある事業のひとつです。
出典:Teslarati、Drive Tesla Canada、台湾証券取引所へのApollo Powerの届け出(2026年10月8日)。Not a Tesla Appはこのニュースを扱っていません。
— EVX News編集部
アイキャッチ画像:メガパックの前身にあたるテスラのパワーパック蓄電システム。撮影:Raysonho @ Open Grid Scheduler / Scalable Grid Engine、出典:Wikimedia Commons、ライセンス:CC BY-SA 4.0。
