テスラが、クルマではなくソフトウェアの「紹介制度」を始めました。10月29日(米国時間)、FSD(Supervised)単体を対象にした初の紹介プログラムを米国で開始。オーナーがリンクを送ると友人はFSDを1か月無料で試せて、その友人が有料サブスクリプションに加入すれば、紹介した側は1か月分の無料FSDか99ドル(約1万5,600円)分のTeslaクレジットをもらえます。その数時間後には、ロボタクシーの営業時間も深夜2時まで延びました。
発表したのはテスラ北米の公式Xアカウントで、日本時間10月30日(金)午前9時48分/米東部時間29日午後8時48分。今のところ米国限定です。
FSD紹介プログラムの仕組み
紹介できるのは、FSDにお金を払っているオーナーだけです。つまりFSD(Supervised)のサブスクリプションを契約中の人か、買い切りで購入した人。テスラのFSD紹介プログラムのサポートページによると、特典は次のとおりです。
- サブスク契約者:FSD(Supervised)1か月分が無料。
- 買い切り購入者:99ドル(約1万5,600円)分のTeslaクレジット。米国の月額料金と同じ額です。
- 特典は1暦年あたり最大12回まで。理屈の上では、サブスク契約者なら1年間タダで乗り切れます。
リンクを受け取る側は、FSD対応ハードウェアを積んだテスラを持っていることが条件で、1か月の無料トライアルが付きます。ただし過去12か月以内にFSDのサブスクにお金を払った人や、FSDを買い切りで購入したことがある人は対象外。紹介者に特典が付くのは、友人がトライアル期間中にサブスクを始めた場合だけです。リンクはテスラアプリの「紹介」画面から送ります。
年12回の上限は、ふつうのオーナーならまず気にしなくていい数字です。ところが投資家でテスラ解説者のソーヤー・メリット氏は、開始からおよそ1時間で上限に到達。アプリには「62日後(1月1日)にまた来てください」と表示されたそうです。
この機能には予兆がありました。10月27日、Not a Tesla Appがテスラアプリ4.62.0のコードの中に、FSD紹介の案内文や「特典を適用する車両の確認」画面、紹介用の「コイン」画像を発見しています。iPadや折りたたみスマホの大画面レイアウトに対応したのと同じアップデートです。その3日後に正式スタートしました。数日前にはカーシェアのTuroがFSD(Supervised)を有効にしたテスラの貸し出しを始めたばかりで、FSDを買わずに試せる入り口がまたひとつ増えたことになります。
これまでの紹介制度は向きが逆でした。友人が新車を注文するとオーナーに特典が付き、FSDはそのおまけ。今回はFSDそのものが紹介の対象で、誰もクルマを買う必要がありません。
ロボタクシーは深夜2時まで
米国の深夜、ロボタクシーの公式アカウントがサービス更新をまとめて投稿しました。目玉は営業時間で、今後は午前6時から深夜2時まで。10月21日公表のテスラ2026年第3四半期決算資料では、オースティンの営業時間は午前6時〜深夜0時とされていたので、夜が2時間延びた計算です。新しい時間帯がすべての都市に適用されるのかどうかは、テスラは明らかにしていません。
同じ投稿で、乗客向けの新機能も紹介されています。
- 乗車中に見られるリアカメラの映像。
- 乗車情報を友人と共有する機能。
- スマホのロック画面に表示される「ライブアクティビティ」のデザイン刷新。
- 画面を暗くし、車内照明をリラックスできる状態にする「カームモード」。
- モデルYのロボタクシー車両でGrokが利用可能に。
アクセシビリティ面でも、アプリの車両位置を示す矢印の改善、車両を探しやすくする触覚フィードバック(振動)、スクリーンリーダーでの音楽操作が加わりました。
深夜1時半の帰り道で本当に使われそうなのはカームモードでしょう。Teslaratiがダラスでの夜間乗車の動画をもとに伝えたところでは、三日月のアイコンをタップすると地図やメディアプレーヤー、Grokの入力欄が消え、「停車」ボタンや温度、音量、サポートだけが残ります。この機能は先にサイバーキャブに入りました。テキサスのロボタクシー車両では、いまやサイバーキャブの台数がモデルYを上回っているので、順番としては自然です。
一般のテスラ車のほうでは、Not a Tesla Appの集計で、ソフトウェア2026.38.6が10月29日から配信され始め、同サイトが把握する車両の約1%に届いています。変更点には「Grokのベータ版終了」や「FSDストリーク」が挙がっていますが、どちらもまだ公式リリースノートにない「非公開の変更」扱い。テスラ自身のリリースノートと配信の広がりを確認できた段階で、あらためて詳しくお伝えします。
EVXの視点
今回の紹介プログラムで、テスラの狙いがはっきり見えました。FSDをサブスク事業として伸ばしたい。そのためのいちばん安上がりな営業部隊が、すでにお金を払っているユーザーなのです。友人のすすめ付きの「1か月無料」は、テスラがほとんど打たない広告よりよほど効きます。ただ、日本にはまだ関係ありません。FSD(Supervised)は国内で未承認で、テスラジャパンの紹介特典は相変わらず新車の初回購入の割引です。それでも承認が下りれば、国内のHW4搭載Model 3/Model Yのオーナーこそ、この「お試し+紹介」の仕組みが狙う層そのもの。FSDの解禁と同時に始まると考えておいたほうがよさそうです。ロボタクシーの深夜2時営業も一つの目安になります。日本の無人運転は、レベル4の区域指定からWaymoと日本交通・GOによる東京での走行テストまで、まだ実証の段階。一方テスラは、すでに深夜の移動を商品として売っています。
出典:テスラ北米のX投稿、テスラ FSD紹介プログラム サポートページ、ロボタクシー公式のX投稿、ソーヤー・メリット氏のX投稿、Not a Tesla App(アプリ4.62のコード)、Not a Tesla App(2026.38.6の配信状況)、Drive Tesla、TeslaNorth(紹介プログラム)、TeslaNorth(ロボタクシー営業時間)、Teslarati。
— EVX News編集部
アイキャッチ画像:米サンノゼのサンタナ・ロウで展示されている2025年型テスラModel Y。撮影:Dllu / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0、トリミングあり)。
