エヌビディアNemotron 3.5 Super VL、見て読んで5倍速 しかもオープン

AIゴールドラッシュで「シャベル」を売っているのがエヌビディアだとすれば、今度はかなり出来のいい「地図」までタダで配り始めました。エヌビディアはオープンモデル群「Nemotron(ネモトロン)」を拡充し、文字だけでなく画像も読める1,200億パラメーターの「Nemotron 3.5 Super VL」と、AIエージェントを他人のクラウドではなく自分の机の上で動かすための凝縮版「Nemotron 3.5 Bolt」を公開しました。

Super VL:頭は大きく、食は細く

エヌビディアのカリ・ブリスキ副社長が書いた公式ブログの発表によると、Super VLは「特化型の常時稼働エージェント」向けのオープンな120Bモデル。何日も、何週間も続く業務フローを黙々とこなすソフトウェアのためのモデルです。主な数字はこちら。

  • Mixture-of-Experts(MoE)構成:パラメーターは全部で1,200億ですが、各ステップで動くのは約120億だけ(エヌビディアの開発者向けブログより)。速さの秘密はここにあります。
  • スピード:同クラスで最速のオープンなエージェント向けモデルで、Artificial Analysisのリーダーボードでは次点のモデルに比べて最大5倍のスループットだとしています。
  • 精度:指示への追従、ツールの使用、多段階のワークフロー、画像理解で、エヌビディア自身の最大の推論モデルに匹敵。しかもパラメーター数は約5分の1です。
  • 目:「VL」はビジョン・ランゲージの意味。画像、表、グラフ、ウェブページ、PDFから文字や情報を読み取れるので、エージェントが書類を別の画像モデルに回す必要がありません。
  • 学習:事前学習で約26兆トークン、その後約380万サンプルの事後学習と、数十種類の環境での強化学習。

しかも、ここでいう「オープン」は重みをダウンロードできるだけではありません。オープンなデータセットと学習レシピ、さらにNeMo Gymの強化学習環境まで公開しています。Super VLはHugging Face、OpenRouter、ModelScope、そしてNVIDIA NIMのマイクロサービスとして利用できます。

投稿:@nvidia(X)

もう使っているのは誰?

いちばん面白いのは顧客リストです。エヌビディアによると、すでに数十の組織が自社データでSuper VLの事後学習を進めています。発表から何社か拾うと、こんな顔ぶれです。

  • Scale AIが、スカイダンスの取引先与信ファイナンス用エージェントと、EYのM&Aデューデリジェンス用エージェント向けに調整。
  • Rampは財務書類の解析に活用。
  • クラウドストライクは、企業セキュリティの「エージェントによるブルーチーム」向けにカスタマイズ中。
  • Perplexityは検索とエージェント機能に、アトラシアンはJiraやConfluenceをまたぐエージェント検索に。
  • セールスフォースは、安全な環境で政府の業務フローを自動化するためにカスタマイズしています。

どの企業への売り文句も「主導権」です。「クローズドな最先端モデルと違い、組織はSuper VLを自社データで事後学習し、自社のインフラに展開し、つくったものを自ら監督できる」とエヌビディア。与信ファイルを確認する銀行や、不正を探す保険会社にとって、モデルもデータも社内に置いておけるのは大きな話です。

Bolt:24GBに収まるエージェント

発表のもう半分は、机の下にエヌビディアのマシンがある人向けです。Nemotron 3.5 Bolt 74B-A9B 24GBは、ネイティブの2ビット量子化で740億パラメーター(動くのは90億)のモデルを24GBのメモリーに詰め込みました。RTX SparkノートやDGX Sparkで、ほかのアプリを動かしたままローカルのエージェントを走らせられるサイズです。エヌビディアによると、同クラスのオープンモデルでPinchBench 1位、BrowseComp 2位。llama.cpp、Ollama、LM Studio、Unsloth、vLLMに対応しています。さらに小さい弟分の「Bolt E4B 4GB」は、JetsonやGeForce RTXで動く音声アシスタントやロボット向けで、10月23日に登場予定です。

TechCrunchが指摘するように、このラインナップは企業のサーバーからPCまでをカバーしています。つまり、エヌビディアがハードウェアを売っている場所すべてです。

EVX Newsの見方

エヌビディアはチャットボット戦争に勝つ必要がありません。必要なのは、みんなが作り続けること。エヌビディアのチップで一番よく動くオープンモデルは、そのための賢いやり方です。エヌビディアはXへの投稿で、ジェンスン・フアンCEOの考えを「産業はまるごとオープンモデルの上に築かれる」とまとめました。SpaceXSIのGrokからOpenAI、メタまで、AI業界のほかのプレーヤーにとって、Super VLは「無料のモデルでここまでできる」というハードルを引き上げます。そして、クラウドに一切触れないローカルのエージェントは、ファイルを自分のマシンに置いておきたい人にとってうれしいニュースです。

出典:NVIDIAブログ、NVIDIA技術ブログ、NVIDIA Research、TechCrunch。

— EVX News編集部

アイキャッチ画像:「NVIDIA Headquarters」(米カリフォルニア州サンタクララのエヌビディア本社)、撮影:Coolcaesar、ウィキメディア・コモンズより、ライセンス:CC BY-SA 4.0。

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