CATLとファーウェイは、次のバッテリー交換を「誰もハンドルに触れないまま」終わらせたいらしい。ファーウェイのスマートカー事業会社「引望(Yinwang)」は10月19日、福建省寧徳でCATLとその電池交換子会社「時代電服(CAES)」と戦略提携を結んだ。ファーウェイの発表によると、運転支援システム「乾崑(Qiankun)」を積んだクルマが、CATLの電池交換ステーション「チョコレート(巧克力)」を自分で探して入庫し、位置を合わせ、99秒で電池を交換して出ていく。すべて自動だ。
調印式にはCATLの曾毓群(ロビン・ゾン)会長兼CEO、ファーウェイ上級副社長で引望CEOの靳玉志氏、そして電池交換事業を率いるCATL市場体系連席総裁の楊峻氏が出席した。提携は澎湃新聞、界面新聞、第一財経、CarNewsChinaも伝えている。
「スマート電池交換」の中身
ポイントは、クルマとステーションとクラウドがデータを共有すること。クルマは電池のリアルタイムの状態とドライバーの移動パターンを把握し、いつ補給が必要かを自分で判断して、ステーションを選び、自らベイに入る。交換はステーションがやる。中国語では「无感补能」、つまり補給したことすら意識しない体験とうたっていて、運転席に誰もいないかもしれない自動運転時代に向けた仕組みだという。
ファーウェイにとっては空いていた穴を埋める提携だ。第一財経によると、「10分乾崑智駕生活圏」はすでに30万か所超の駐車場での支払いと、約200万の充電スポットでのスマート充電につながっている。足りなかったのが電池交換だった。
CATLにとっては、ステーションよりクルマの話だ。チョコレート交換網は9月29日時点で31省・200都市に2520か所。2025年末の1000か所強から増え、2026年末には3000か所超を目指している(第一財経)。弱点はずっと車両側にあった。一汽、長安、北汽、奇瑞、広汽などのパートナーから20車種以上の交換対応車が出ているが、多くは15万元(約320万円)以下で、ステーション1か所あたりの台数は多くない。ファーウェイ系ブランドはもっと上の価格帯で売れているので、より裕福なドライバーを呼び込める可能性がある。
2027年に5車種、との報道
ここからは会社側が認めていない部分だ。交渉に約半年かかったと伝える第一財経は、乾崑を採用するパートナー車種が順次この交換網につながると報じた。問界などHIMA系の「界」ブランド、新しい「境」ブランド、さらに阿維塔(Avatr)や深藍(Deepal)も含まれるという。来年には交換対応の5車種が登場し、第1弾は東風汽車とファーウェイの共同ブランド「奕境(Epicland)」のモデルだとしている。IT之家も晩点Autoと財聯社の報道として、同じ「5車種・2027年」のスケジュールを伝えた。引望は晩点Autoに提携の狙いは説明したものの、車種構成は認めていない。車種数は「発表」ではなく「報道」として受け止めたい。
第一財経は注意点も添えている。結局はそのクルマが何台売れるか次第だ。奕境の第1弾「X9」は9月24日に発売されたばかりで、価格は28万9800元(約620万円)からだ。
テスラから見ると
テスラも一度、電池交換を試している。2013年にモデルSで90秒の交換を実演し、カリフォルニアで試験ステーションも動かしたが、利用者は少なく、スーパーチャージャーに全力を注ぐ道を選んだ。この判断はうまくいっている。スーパーチャージャーは速く、密になり続けていて、充電なら特別な電池も追加の車両ハードも要らない。中国は別の方に賭けていて、NIO、CATL、そして今回ファーウェイが、99秒の停車はどんな充電器にも勝つという考えで交換網を作っている。CATLはテスラの主要電池サプライヤーでもあるので、テスラが加わらない提携でも、その戦略はテスラに関係してくる。
中国でもう一つ注目を集めている補給の解決策が超急速充電で、BYDは2代目シーガルとフラッシュ充電でこれを強く打ち出した。電池交換とフラッシュ充電が競い合う中国のドライバーには、世界の多くの国にはない選択肢がある。そんな市場で、9月に一番売れたクルマはテスラ・モデルYだった。
日本には乗用車向けの電池交換網と呼べるものがほぼないので、これがすぐ日本に来ることはない。とはいえ、電池半分で家を出て、オーナーが何もしないうちに満タンで帰ってくるクルマという便利さは、国境を越えやすい。テスラの答えは、ワイヤレスで自分で充電するように設計されたサイバーキャブだ。
出典:ファーウェイ乾崑(公式)、第一財経、澎湃新聞、界面新聞、IT之家、CarNewsChina
— EVX News 編集部
アイキャッチ画像:IAA Transportation 2024(ハノーファー)に展示されたCATLの充電ユニット(電池交換ステーションではありません)。撮影:Matti Blume/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)。
