スターリンクの家庭向けネット回線から「全国一律の料金」がなくなります。スペースXは米国の一部地域のResidential(家庭向け)プラン利用者に対し、今後の月額料金は地域のネットワーク容量と需要に応じて「おおむね四半期ごと」に見直すとメールで通知しました。ミズーリ州の一部の町では最上位のResidential Maxが月130ドル(約2万500円)から156ドル(約2万4,600円)に上がる一方、車で数時間のカンザス州の町では同じプランが104ドル(約1万6,400円)に下がります。
メールが届いたのは米国時間10月29日(木)。投資家のソーヤー・メリット氏が全文を投稿し、PCMagもRedditやFacebookの利用者から複数の例を集めています。文面はどれも同じです。
「コンステレーション(衛星群)の拡大とネットワーク容量の変化に伴い、料金は随時変更される場合があります。11月30日以降の次回請求サイクルから、お客様のResidentialプランの月額料金は156ドルに調整されます」
スペースXは値上げだけではないとも説明しています。「容量を拡大するにつれ、お住まいの地域の料金が下がることもあります」。メールでは、新型のV3衛星で容量を増やしている一方、加入者は「地域でも世界でも」増え続けているとしています。
新しい料金はこうなっている
PCMagは複数の町でスターリンクの申し込みページを確認しました。米国のResidentialの標準料金は、100Mbpsが55ドル(約8,700円)、200Mbpsが85ドル(約1万3,400円)、Maxが130ドル。各地の表示は次のとおりです。
- ミズーリ州ローラ:Residential Maxが156ドル。
- ミズーリ州ワルシャワ:Residential Maxが143ドル(約2万2,600円)。
- ミズーリ州カンザスシティ:49.50ドル、76.50ドル、117ドル(約7,800円、約1万2,100円、約1万8,500円)。
- カンザス州メアリーズビル:44ドル、68ドル、104ドル(約6,900円、約1万700円、約1万6,400円)。
標準料金と並べると、決まりごとが見えてきます。どの数字も、定価のちょうどプラスマイナス10%か20%なのです。ローラは+20%、ワルシャワは+10%、カンザスシティは−10%、メアリーズビルは−20%。PCMagは、スターリンクのサイトのコードに上下20%を上限とする設定らしきものがあることも見つけています。つまり今のところは、航空券のような変動料金というより、地域ごとに4〜5段階の固定料金を割り当てる仕組みに近いと言えます。
米国だけの話でもありません。PCMagによると、英国のスターリンク設置業者が現地での値下げを確認しています。スペインのADSLZoneは、バレンシアで基本プランが月35ユーロ(約6,200円)から31.60ユーロ(約5,600円)に下がったと報じました。
スペースXがこうする理由
スターリンクの料金がこれまで完全に一律だったわけではありません。2023年には混雑した高需要エリアで月10ドル(約1,600円)を上乗せし、容量に余裕のある地域では値下げしました。今年5月にはResidential、Roam、スタンバイモードを5〜10ドル(約800〜1,600円)値上げしています。新しいのは、地域ごとに定期的に料金が変わり、約1か月前にメールで通知される点です。
理屈はシンプルです。衛星のビームが受け持つ地上の範囲と帯域幅は決まっています。そのエリアで加入世帯が増えすぎれば、全員の速度が落ちる。そこで料金を上げれば新規加入が減り、すでにつながっている人の通信品質を守れます。逆にビームに余裕があれば、値下げでDSLやモバイルルーターから乗り換える人を呼び込めます。収益面の事情もありそうです。PCMagの数字では、スターリンクの第3四半期のユーザー1人あたり月間平均収入は、一般消費者向け加入者1,360万件で69ドル(約1万900円)。1年前の83ドル(約1万3,100円)から下がっています。
リスクは利用者の信頼です。ネット回線の料金は毎月同じ、というのが当たり前の感覚で、1か月前の通知で20%上がれば、プランを下げたり解約したりする人も出るでしょう。一方で、安いエリアの世帯は何も言わずに値下げを受けられます。スペースXはモバイル分野でも動きが活発で、FCCが衛星とスマホの直接通信に482MHzを追加する案を採択したばかりです。
EVXの視点
日本のスターリンク利用者には今のところ変化はなく、国内で変動料金が導入されたという報告も見当たりません。国内の料金ガイドによると、Residentialは月7,100円、一部地域では100Mbpsプランが月4,900円から。どちらもドル換算では、すでに米国より大幅に安い水準です。もし日本にこの仕組みが来れば、理屈の上ではビームに余裕のある地方や離島が安くなり、加入が集中する都市近郊が高くなるはずです。これは日本でのスターリンクの実際の役割、つまり災害時のバックアップや地方の回線、そしてKDDIやNTTドコモの衛星とスマホの直接通信サービス(ドコモのStarlink Directなど)の基盤という位置づけとも合います。より大きな壁は文化かもしれません。日本の固定回線の利用者は、毎月変わらない料金に慣れています。四半期ごとの料金変更は目立つので、導入するなら丁寧な事前通知と明確な上限、そしてとにかくわかりやすい日本語の説明が必要になりそうです。
出典:ソーヤー・メリット氏のX投稿(スターリンクの通知メール)、PCMag、ADSLZone、スターリンク 料金プラン、スターリンク 日本の料金プラン、We Streamer(日本の料金ガイド)。
— EVX News編集部
アイキャッチ画像:芝生の上に設置されたスターリンクのスタンダードアンテナ。撮影:BugWarp / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0、トリミングあり)。
