マリオ、ゼルダ、ピクミンの生みの親、宮本茂氏が文化勲章を受章します。ゲーム業界からは初めてです。京都での記者会見で、73歳の任天堂代表取締役フェローは、生成AIについて、有名クリエイターの発言としてはかなりわかりやすい答えを出しました。AIが作業をしてくれるようになるほど、みんなが「本当に作るとは何なのか」を真剣に考える機会になる、というものです。
政府は10月23日(金)、2026年度の文化勲章受章者を発表しました。読売新聞によると、メディア芸術のゲーム分野からの選出は初めてです。宮本氏は前日22日、京都の任天堂本社で記者会見に臨み、ファミ通.com、4Gamer.net、GAME Watchなどが詳しいやり取りを掲載しています。
「ものを作る」と「作業する」
生成AIでものづくりのハードルが下がっている今、どう考えるかと聞かれた宮本氏は、自身のデザインの原点にさかのぼりました。かつてデザイナーは、ポスターの文字をきれいに描く「レタリング」を学校で習い、それができればデザイナーと呼べた。それがワープロやコンピューターの進化で置き換わると、別のものが見えてきます。ファミ通によると、宮本氏は「そういう技術、テクニックの部分が進化すると、そこで初めて、レイアウトのセンスやその人個人のデザイン能力が表に出てくるんです」と話し、「いま、まさにAIでそういうことが起こっている」と続けました。
そして、いつも使っているという線引きを示しました。「僕らはいつも、『ものを作る』ということと『作業する』ということを分けています」。大きな構成を決めて、どこへ向かうかを決めるのが「作る」。そこから先の、穴を埋めたり、きれいに仕上げたりするのが「作業」です。「やっかいなことに、作業って楽しいんですよ」。作っているという満足感が強いからです。「でも、怖いのは、その作業に満足してしまって、『けっこういいものができた』と勘違いしている自分なんですよ」
結論は前向きでした。「AIがいろいろな作業をしてくれるようになればなるほど、『本当に作るとは何なのか』をみんなが真摯に考える機会になるのは、大いにいいなと思います」。コピーだけでできたものは残らない。残るのは、意図を持った個人が、作業をコンピューターに手伝ってもらうという形だといいます。「AIがどこまで進化するか、すべてをやってくれるようになるかもしれませんけど、まだまだ我々がやれることは残っているなと思います」
GAME Watchの記事では、コピーの話がさらにはっきりしています。コピー&ペーストだけでできたデザインは、個人の意図がないので残らない、という趣旨です。
ネットの反応
この発言はSNSで一気に広まりました。イザ!(産経デジタル)は、「金言」「痺れる」といった称賛や共感の声を紹介しています。ゲームとAIをめぐる議論が今まさに熱いなかで、宮本氏はどちらかの側につくというより、問いそのものを動かしました。AIが良いとも悪いとも言わず、才能と混同されやすかった部分をAIがはぎ取っていく、と話したのです。
若い開発者へのアドバイスもありました。4Gamerによると、既存の面白かったゲームをベースに「こう改造したらもっと面白くなる」という作り方はやめてほしい、と。大元の「こんなことをしてみたら面白いんじゃないか」という発想からゼロから作り上げるほうが、きっと楽しいし、やりがいもあると話しています。
任天堂での50年
宮本氏は金沢美術工芸大学で工業デザインを学び、1977年に任天堂に入社。『ドンキーコング』『スーパーマリオブラザーズ』『ゼルダの伝説』『ピクミン』などを生み出し、育ててきました。GAME Watchによると、2019年には文化功労者に選ばれています。今回の受章については「私一人で作ってきたものではなく、大勢の人たちと一緒に作ってきたものなので代表していただくつもりです」と語りました。
会見では、3D CADのようなソフトを「最高のおもちゃ」と呼び、コンピューターのインターフェースを設計する人たちの中で、ゲームぐらい真剣にインターフェースを作っている人たちはいない、とも話しています。クルマのタッチパネルと格闘したことがある人なら、うなずける話です。いま「作業」を担うAIの話は、月之暗面の新モデル「Kimi K3.1 Pro」の記事を、日本のロボットメーカーの動きはCEATEC 2026のレポートをどうぞ。
出典:ファミ通.com、読売新聞、4Gamer.net、GAME Watch、イザ!(産経デジタル)
— EVX News 編集部
アイキャッチ画像:政府の栄典を受けた際の宮本茂氏の公式肖像(2015年6月)。画像:大臣官房人事課 / Wikimedia Commons(CC BY 4.0)、トリミング
