10月16日に幕張メッセで閉幕したCEATEC 2026。主役をさらったのはロボットでした。東京大学発のスタートアップは、三菱自動車の工場での量産に向かう国産ヒューマノイドを持ち込み、ホンダはオペレーターの手元をAIが支えるアバターロボットを披露。さらに会場の外では、川崎重工業と松尾研究所が、人型ロボットに6週間で22.7kgを持ち上げさせた方法を明かしました。日本の「フィジカルAI」ウィークを、まとめて解説します。
Highlandersの「N」:量産を前提にした日本製ヒューマノイド
東京のスタートアップHighlandersは10月13日と14日、ホール4のAWSブースで人型ロボット「N」の量産試作機を展示し、同社のエンジニアによるライブデモを行いました。同社のCEATEC出展のお知らせによると、ポイントは次のとおりです。
- 完全な垂直統合:メカ、エレクトロニクス、組み込みソフト、AIをすべて自社で開発。テスラファンの皆さん、どこかで聞いた話ですよね?
- 可搬重量:片腕で8kg、両腕で12kg。
- 出荷目標は2027年。人のために造られた工場や施設を作り替えず、そのまま働けるロボットを掲げ、日本の人手不足に真正面から狙いを定めています。
産業面の腕力を担うのは三菱自動車です。7月に結んだ覚書で、両社は三菱自動車の自社工場向けヒューマノイドの共同開発について協議することで合意しました。三菱自動車の発表によると、同社は京都製作所の遊休建屋で、早ければ2027年からHighlandersのロボットを生産することも検討するとしています。三菱自動車は、量産を目的とした自動車メーカーとヒューマノイド開発企業の提携としては初めてのケースだと説明。すでにHighlandersに出資していて、追加出資も予定しています。業界紙の日刊自動車新聞は、月産約1,000台規模の計画だと報じました。Highlandersは9月、経済産業省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が進める国のロボット基盤モデル開発プロジェクト「GENIAC」にも採択されています。
ホンダのアバターロボットに、AIの相棒
ホンダのアプローチは別の方向です。Honda アバターロボットは人の代わりをするのではなく、人の技能を離れた場所へ届けるためのもの。オペレーターがゴーグルとグローブを着け、遠く離れた場所からロボットを通じて作業します。CEATECでは、遠隔地のエンジニアがこのロボットでエンジンケースのネジ締めを実演。レスポンスによると、ホンダは新しいAIサポートシステムの「あり」と「なし」の2パターンでデモを行いました。
- AIの助けがないと、多指ハンドはネジをつまめても、取り付けのための持ち替えに苦戦。AIをオンにすると、指の力加減のバランスをとって持ち替えに成功しました。
- ナットドライバーは、アシストなしでは回らず、アシストありではすんなり回りました。
- トルクレンチでは、工具のふらつく軌道をAIが補正(なにしろオペレーターは空中で腕を振っているのです)。おかげでネジを締めることができました。
本田技術研究所のフロンティアロボティクス領域の研究者、山口氏はレスポンスに対し、このプロジェクトはホンダがASIMOの終了を決めた頃、約5〜6年前に始まったと語りました。ASIMOから得た教訓は、器用な手と完全な自律がボトルネックだということ。だからホンダは、人間の判断とロボットの精密さを組み合わせる道を選んだのです。もうひとつの敵は通信の遅れ。日本と米国の間でも約200ミリ秒の遅延が出ることがあり、細かい制御はAIがロボット側で処理してその差を埋めます。最初の実用先は工場での遠隔トラブル対応で、医療、設備保守、災害対応、宇宙はその先になる見込みです。
川崎重工×松尾研究所:22.7kg、6週間
10月13日、東京大学松尾研究室発のAI企業松尾研究所は、川崎重工業と共同で進めた、同社の人型ロボットKaleido9向け強化学習制御ポリシーの開発成果を公表しました。NVIDIAのシミュレーターを使い、学習から実機での動作までのsim-to-realパイプライン全体を6週間で構築。Kaleido9は約50ポンド(22.7kg)のカゴを両手で持ち上げ、テーブルに置いてみせました。このデモは、羽田にある川崎重工の拠点KAWARUBAでの試験を経て、5月21日にサンノゼで開所した川崎重工のフィジカルAIセンターのオープニングで披露されたものです。発表では、日本の成長戦略が2040年度までに官民で10.5兆円のフィジカルAI投資を計画していることにも触れています。
EVX Newsの視点
パターンに気づきましたか?ヒューマノイド競争に対する日本の答えは、身軽なスタートアップや研究機関と、昔ながらのものづくりの腕力を組み合わせること。Highlandersと三菱自動車、松尾研究所と川崎重工、という具合です。テスラはオプティマスをすべて自社で手がけていて、Highlandersはその垂直統合の戦略を小さなスケールで実践しています。日本は世界でも特に深刻な人手不足を抱え、同時に世界有数の工場も抱えています。2027年に京都の工場からヒューマノイドが出てくるようになれば、オプティマスに本物の日本のライバルが現れることになります。大歓迎です。競争があるほど、みんなのロボットは賢くなるのですから。
出典:Highlanders(PR TIMES)、三菱自動車、日刊自動車新聞、レスポンス、ホンダ、松尾研究所。
— EVX News編集部
アイキャッチ画像:Highlanders(PR TIMESより)。
