インドでのスターリンクの足踏みをめぐって、イーロン・マスク氏が1週間にわたって激しい投稿を続けたあと、ついにリライアンス・インダストリーズが反応しました。しかも意外なほど穏やかなトーンで。リライアンスは「スターリンクを含む」競争を歓迎すると表明。スターリンクは「高速インターネットでインドをつなぐ準備はできている」と応じ、マスク氏はリライアンスに「感謝する」と返しました。
ここまでの経緯
スターリンクは何年も前からインドでのサービス開始を目指してきました。Teslaratiのまとめによると、同社は2025年に衛星通信事業者の免許を取得し、その後インドの宇宙規制当局IN-SPACeの承認も得ました。まだ持っていないのは、内務省の最終的なセキュリティ認可と周波数の割り当て。これがないと、1人のお客さんにもサービスを提供できません。
先週、マスク氏の我慢が限界に達しました。スターリンクは「インドの人々への独占的な締め付けを維持しようとする一部のオリガルヒに阻まれている」と投稿し、「インドの人々に対する犯罪だ」と批判。翌日には、リライアンスのムケシュ・アンバニ会長が「インドの本当のボス」なのかと問いかけました。極めつけは10月9日。「親愛なるアンバニ首相へ」と題した皮肉たっぷりの公開書簡で、「スターリンクの競争参加を認めることを検討していただけないか」と書いたのです。
マスク氏の主張はビジネスだけの話ではありませんでした。続く投稿では、スターリンクは「世界中の自然災害で、ほかの通信手段がすべて途絶えたときに命を救ううえで欠かせないことが証明されている」と強調。公開書簡では、インターネットにつながらない地域がインドにはまだ多く、接続できれば子どもたちには教育が、小さな企業には世界市場が開けると訴えました。
リライアンスの答え
インド最大の通信事業者ジオを傘下に持つリライアンスは、米国時間10月15日夜(日本時間16日午前11時15分)に声明をXに投稿しました。マスク氏の名前は一度も出しませんが、冒頭で「リライアンスとインド市場に関する最近の発言」に触れています。ポイントはこちら。
- インドは「インド企業でも外国企業でも、すべての申請者に同じ手続きを適用している」。「ジオ自身の衛星サービスも認可を待っている」。
- 「リライアンスは、競争を恐れたことは一度もない」。
- 「スターリンクを含め、衛星通信での競争を歓迎する。ジオを含むすべての事業者は、インドの人々に奉仕し、この国の法律と政策を守らなければならない」。
声明ではさらに、ジオが2016年に顧客ゼロで市場に参入し、今では5億3,000万人以上の顧客を抱えていることにも触れています。
スターリンクの返答
スターリンクは10月16日(日本時間17日午前2時27分)、この声明を引用し、落ち着いた事実ベースで自社の立場を説明しました。「当社はインドの規制当局、業界、事業者と5年以上にわたり緊密に協力してきた」と同社は投稿。「インドのトラフィックだけを安全・確実に扱うため、専用のシステム、ゲートウェイ、そのほかのインフラをすべて国内に構築した。いずれも必要な政府承認を得たうえでだ」。締めの言葉は「スターリンクは、高速インターネットでインドをつなぐ準備ができている」。
マスク氏はこれをリポストし、リライアンスにひと言で返信しました。「感謝する(Much appreciated)」。
「ゲートウェイ」の一文が重要な理由
スターリンクが国内のゲートウェイを強調したのには理由があります。Tesla Northによると、ゲートウェイはセキュリティ論争の争点になっていて、RSS系の団体スワデシ・ジャグラン・マンチは10月13日、スターリンクに許可を出さないよう政府に求め、インドのトラフィックは国内のゲートウェイを経由させるべきだと主張していました。スターリンクの答えは、「もうやってますよ」というわけです。
インド通信省は、不公平な扱いだという主張を否定しています。Tesla Northによると、同省は免許を持つ衛星事業者3社、スターリンク、ユーテルサット・ワンウェブ、ジオ・サテライト・コミュニケーションズのすべてについてセキュリティ審査を進めており、3社は「おおむね同じ規制段階」にあると説明しました。審査が終わってはじめて周波数を申請できます。リライアンスもスターリンクも、サービス開始日は示していません。
パートナー?ライバル?それとも両方?
ここにはひとひねりあります。2025年3月、ジオはスターリンクの承認を条件に、自社店舗でスターリンクの機器を販売することに合意していました。Teslaratiによると、そのパートナーは今やライバル候補でもあり、ジオは約1,600基の独自コンステレーションを検討していると報じられています。販売契約がまだ生きているのかは、はっきりしません。
EVX Newsの視点
マスク氏の投稿は遠慮がありませんでしたが、効果はありました。1週間前まで沈黙していたリライアンスが、今では公式にスターリンクを歓迎すると表明しているのです。これは同社がこれから問われ続ける、公の約束です。そして賭けられているのは企業同士の対立よりずっと大きなもの。インドには何億もの人々がいて、その多くは光ファイバーや基地局を整備しても採算がとれない地方に住んでいます。スターリンクは、そもそもそのために生まれたサービスです。双方が本気で「いいサービスが勝てばいい」と思っているなら、次の一手はインドの規制当局です。セキュリティ審査を終えて、お客さんに選ばせてあげてほしいところです。
出典:Teslarati、Tesla North、Drive Tesla Canada(背景)、リライアンス・インダストリーズ(X)、Starlink(X)、イーロン・マスク氏(X)。執筆時点でNot a Tesla Appはこのニュースを扱っていません。
— EVX News編集部
アイキャッチ画像:スターリンクのユーザー端末。撮影:Ka23 13、出典:Wikimedia Commons、ライセンス:CC BY 4.0。
