テスラがテキサス州で計画している総額101億ドル(約1兆5,900億円)の太陽電池工場が、地元で大きな関門を通過した。ヒューストン南西のフォートベンド郡の郡政委員会が、「Project Crystal Sun(プロジェクト・クリスタルサン)」の優遇措置に関する4つの協定をすべて4対0で承認した。ダニエル・ウォン暫定郡判事は棄権。工場は太陽電池セルと完成品パネルを生産し、フル稼働時の従業員は9,712人を見込む。
採決は米中部時間10月22日(木)午後の郡政委員会(日本時間23日早朝)。TeslaratiとTeslaNorthが議事資料と会議の映像をもとに結果を伝え、地元ヒューストンのKPRC Click2Houston、ABC13、Community Impactも4対0を確認している。ウォン氏が採決に加わらなかったのは、自身のエンジニアリング会社が過去にテスラの仕事をしていたためだ。
郡が結んだ4つの協定
いずれも議題25番。1つ目は、郡が8月24日に設けた「再投資ゾーン第34号」での固定資産税の減免。2つ目は「チャプター381」の経済開発協定で、Community Impactの説明では、テスラが払った税金の一部を郡が補助金として戻す仕組みだ。3つ目は外国貿易地域(FTZ)の指定に異議を唱えない協定で、対象となる輸入資材の関税を抑えられる。これに一部の税の代わりに支払う「PILOT」が組み合わさる。4つ目は「トゥルーアップPILOT」協定で、払うべき税額がきちんと払われるよう毎年の支払いを求める。
郡の経済開発ディレクター、カルロス・グズマン氏はABC13に大まかな中身を語っている。テスラは固定資産税自体は払う。最初の10年は設備と在庫にかかる税がゼロ、11〜30年目は在庫税の90%が免除される可能性がある。最初の10年のうち2年間、1万2,000人を雇用すれば、さらに5年延長。総額は示されなかった。それでも郡が踏み切った理由について、グズマン氏の答えは明快だ。「非常に競争の激しい案件だ。だから郡は勝負に残るために踏み込む必要があった。これをやらなければ、郡は候補から外されていた」
テスラが建てたいもの
用地はFM762とFM1994の交差点付近、ローゼンバーグの南、ニードビルに近い約3,000エーカー(Community Impactによれば3,057エーカー、約12平方キロ)で、ラマー統合学区の中にある。8月にソーヤー・メリット氏が見つけ、Not a Tesla AppとDrive Tesla Canadaが報じた州への申請書は、垂直統合型の工場を描いている。インゴットとウエハーから始まり、コーティング、メタライゼーション、セル検査を経て、大規模発電所向け、商業施設向け、住宅の屋根向けのモジュールまで。Teslaratiによると、投資の内訳は不動産15億ドル(約2,400億円)、設備86億ドル(約1.4兆円)だ。
申請書のスケジュールでは、建設は2026〜2028年、商業運転は2029年第1四半期。建設のピーク時に1,147人、2033年までに常勤9,712人を雇う。Drive Tesla Canadaは、2033年時点の年間給与総額を約13億ドル(約2,000億円)、38年間で州と地元にもたらす税収を64億ドル(約1兆円)超とするテスラの試算を伝えている。
まだ決まったわけではない
今回の採決で用地が決まったわけではない。テスラはテキサス州会計監査官に対し、ほかの候補地も検討中だと伝えている。Teslaratiがヒューストン・クロニクルを引いて報じたところでは、用地選定のアドバイザーが9月にラマー統合学区の理事会で、候補はフォートベンドと州外の1か所に絞られ、相手は「非常に魅力的な条件」を出していると説明した。テスラは2026年内の決定を目指す。優遇措置には州会計監査官と州知事室の承認もまだ必要だ。学区のほうは9月15日、JETI法に基づく協定を7対0で前に進めている。もっとも、近所の全員が歓迎しているわけではない。長年住む女性はKPRCに、野生動物や交通量、静かな暮らしへの影響が心配だと話している。
この話が大きいのは、イーロン・マスク氏の太陽電池の目標があるからだ。Teslaratiによると、マスク氏は1月の2025年第4四半期決算説明会で「原材料から完成品の太陽光パネルまでサプライチェーン全体を統合し、年間100GWの太陽電池生産を目指す」と語っている。同じヒューストン圏のブルックシャーにはすでにメガファクトリーがあり、メガパック3の生産が始まった。第3四半期の説明会では2027年分のメガパックがほぼ売り切れだと説明しており、詳しくは第3四半期決算の記事で書いた。電池には、それを満たす電気が要る。テスラはそこも自分で作りたいのだ。
日本とのつながりで言えば、身近なのは家庭向けのテスラエナジーだ。テスラジャパンは金曜、海の近くの家向けにPowerwall 3をXで紹介し、重塩害や粉じんに強い設計だとアピールしていた。ウォールコネクターとPowerwallは屋根の太陽光でクルマを充電する機能もすでに持っている。送電網向けでも、台湾Apollo Powerの1GWh発注のように、メガパックはアジアで大口の受注を重ねている。セルがフォートベンドで作られるのか、別の場所になるのか。テスラは年内に決めるという。
出典:Teslarati、TeslaNorth、Not a Tesla App、Drive Tesla Canada、KPRC Click2Houston、ABC13 Houston、Community Impact、フォートベンド郡 税減免協定(PDF)、テスラジャパン(X)
— EVX News 編集部
アイキャッチ画像:テスラのソーラールーフと地上設置型の太陽光パネルがある住宅。画像:Wikideas1 / Wikimedia Commons(CC0)、トリミングあり
