DeepSeekがまたやりました。中国のAI企業が出した新モデル「DeepSeek-V4.1-Flash-1017」は、名前こそ「マイナーアップデート」ですが、同社のベンチマークでは、Claude Opus 5やGPT-5.6 Solといったずっと大きなモデルを、コーディングやエージェント系のテストのいくつかで上回っています。しかも1タスクあたりのコストはほんの一部。重みはMITライセンスで公開され、自社の検索エンジンも開発者に開放します。
何が出たのか
DeepSeekは10月17日、Xでこのモデルを発表しました。
- どこで使える:DeepSeekのウェブサイト、アプリ、APIで提供開始。重みはHugging FaceとModelScopeでMITライセンスのもと公開されています。
- API:DeepSeekのAPIドキュメントによると、モデル名「deepseek-flash」は今後V4.1-Flash-1017を指し、旧V4 Flashの名前も新モデルにFlash料金で振り替えられます。
- コンテキスト:100万トークン。DeepSeekは最大出力を256Kトークン以上に設定するよう勧めています。
- 売り文句:ベンチマークのスコアアップ、タスク完了の高速化、出力の短縮。DeepSeekは「性能とコストのパレート改善」と呼んでいます。
数字で見ると
DeepSeekのモデルカードが、新モデルと前のV4.1-Flash、そして大型のライバルを比べた結果はこちらです(スコアはすべてDeepSeek自身のテスト)。
- DeepSWE v1.1(ソフトウェア開発):74.2から77.0に。Claude Opus 5は74.0、GPT-5.6 Solは73.0。
- Terminal-Bench 4.0:31.2から42.3に。GPT-5.6 Solは39.9で、首位は51.8のOpus 5のまま。
- ProgramBench:20.3から29.1に(Opus 5は37.0)。
- Automation-Bench v1.0.6:60.5で、Opus 5の50.3を上回りました。
- Humanity’s Last Exam(ツールなし):36.8から42.6に。ただしOpus 5の56.3にはまだ大差です。
つまり全勝ではありません。難しい推論や一部のコーディングテストでは、アンソロピックのフラッグシップがまだ上です。本当のニュースはコストのほう。The Decoderは、下に載せたDeepSeekのDeepSWEコスト比較グラフに注目しています。新モデルは1タスク0.20ドル弱で77.0%を達成し、低設定でも約0.10ドルで72%超え。前バージョンは約0.50ドルで74.2%でした。グラフに並ぶGPT-6 Astra、Gemini 3.8 Flash、Claude Opus 5などのライバルは、1タスク2ドルから10ドル超かかり、それでもこの精度には届いていません。

The Decoderによると、DeepSeekは今回のアップデートを「自己フィードバックによる強化学習(RLSF)」で訓練しました。人間の評価者や別の報酬モデルの代わりに、モデル自身の確信度や自己批評を報酬として使う手法です。DeepSeekは、これがゲームから3Dモデリングまで、プロジェクトをゼロから丸ごと作る力に効いているとしています。大事な注意点として、第三者によるベンチマークはまだ出ていません。実際のコードの品質は、ランキングの数字とかなり違うこともあります。
検索をみんなに
開発者にとっては、もうひとつの発表も同じくらい大事かもしれません。DeepSeekはSearch APIとFetch APIを開放しました。1日に数億件のリクエストをさばくという自社製の検索エンジンで動いています。料金はどちらも1,000回あたり0.75ドル。DeepSeek Harness、Claude Code、Codexのサーバー側ツール経由の呼び出しは、DeepSeek APIユーザーなら課金が始まる10月31日16:00(UTC、日本時間11月1日午前1時)まで無料です。
細かい注意書き
完璧な1週間だったわけではありません。日経アジアによると、DeepSeekは木曜日に約5時間の障害を起こし、V4-ProとV4.1-Flashのモデルとチャットサービスが現地時間の午前8時から午後1時まで止まりました。原因は明かさないまま、有料ユーザーに一部返金しています。日経アジアは、米国の半導体輸出規制による計算資源の不足が一因かもしれないと示唆しています。The Decoderはさらに、中国政府がオープンウェイトモデルの公開ルールを厳しくする可能性があり、性能が上位10位に入るかどうかで線を引くかもしれない、という報道にも触れています。そうなれば、DeepSeekのオープンソース戦略には大打撃です。
EVX Newsの視点
DeepSeekが新モデルを出すたびに、米国のAI企業は同じ問いを突きつけられます。無料でダウンロードできるモデルが20セントでかなり近いところまで来るのに、1タスク5〜10ドルをどう正当化するのか。このプレッシャーは、エージェントを作る人みんなにとっていいことです。速さと価格でも勝負しているGrokも例外ではありません。賢いAIが安くなるほど、ロボットやクルマなど、私たちが追いかけているあらゆるものに速く広がっていきます。「マイナー」の定義がだいぶ大きい気もしますが、次の注目点は、このベンチマークの伸びが第三者のテストでも通用するかどうかです。
出典:@deepseek_ai(X)、Hugging FaceのDeepSeekモデルカード、DeepSeek APIドキュメント、The Decoder、日経アジア。
— EVX News編集部
アイキャッチ画像:DeepSeekのロゴ。画像:DeepSeek(DeepSeekのGitHubより、Wikimedia Commons経由、MITライセンス)。グラフ:DeepSWE v1.1の精度と1タスクあたりコストの比較。画像:DeepSeek(DeepSeek公式Xより)。
