Gemini 4 Argonがフロンティア級AIの戦いに殴り込み グーグルは「格安価格」という手土産つき

「グーグルはAIで出遅れた」。そんな声がささやかれていたのを、グーグル自身もしっかり覚えていたようです。2025年末のGemini 3以来となる本格的なフロンティアモデル「Gemini 4 Argon(アルゴン)」が、10月13日に有料の開発者向け、そしてPro・Ultraの契約者向けに公開されました。ベンチマークでOpenAIとAnthropicに真っ向勝負を挑み、価格ではさらに強烈な一撃を見舞っています。

まずは経緯をおさらい

Argon自体は9月下旬から存在していましたが、使えたのはグーグルの「Fairwind Program」に選ばれた、ごく一部の「信頼できるサイバー防御の専門家」だけでした。今回、その入場制限が(一部)解除されたかたちです。AI Studio経由のGemini API、Google AI ProとUltraの契約者向けにはGeminiアプリと検索のAIモード、Ultra契約者向けにはエージェント型コーディングツール「Antigravity」で使えます。無料ユーザーや下位プランはまだ順番待ちで、いつ使えるようになるのか、そもそも使えるようになるのかについて、グーグルは何も明らかにしていません。

本当の見出しは「値札」

Argonの導入価格は入力100万トークンあたり2ドル、出力100万トークンあたり10ドルで、キャッシュされた入力は95%引きです。このキャンペーン価格は11月30日までで、その後は4ドルと20ドルに倍増します。The Vergeが指摘するように、キャンペーン終了後の価格でさえ、トークン単価ではOpenAIのGPT-6 AstraやAnthropicのFable 5系を大きく下回ります。

ただし、独立系の検証機関からは小さな注意書きも。トークン単価が安いことと、仕事1件あたりが安いことは別の話です。Revereのベンチマークまとめによると、Artificial Analysisの計測では、Argonは1タスクあたりの出力トークンがGPT-6 Astraの2倍以上でした。文字数で料金をとる天才肌の友人が、とにかく説明好き……と考えるとイメージしやすいかもしれません。

で、実力のほどは?

グーグル自身の成績表では、GPT-6 Astra、Claude Fable 5.1、Claude Opus 5.5と比べて、ほとんどの項目でArgonが首位か首位タイ。まあ、当然そうなりますよね。独立系の数字のほうが、もう少し面白いストーリーを語ってくれます。

  • Vals Index(金融、コーディング、法務、税務の実務):Argonは68.9%で1位。お見事です。
  • Artificial Analysis Intelligence Index:Argonは53でGPT-6 Astraと並び、58のClaude Opus 5.5には届きませんでした。
  • 苦手分野:ターミナル操作が多い長いコーディング作業や科学系タスクでは、まだGPT-6 AstraとClaude Opus 5.5に分があります。

Argonが本領を発揮するのは、知的労働と長い文書の処理です。グーグルはAPIで入出力合計100万トークンという上限をアピールしています。巨大なコードベースや山のような書類も、ひと口で飲み込める量です。

グーグルが見せた「宿題」

グーグルは実績も持ってきました。もっとも、社内のものですが。公式の発表記事によると、ArgonはChromeチームが、約4,000万行あるChromiumのコードベースから約600万行のレガシーフォルダを切り分ける作業を手伝い、「数か月かかる仕事を数週間で」終わらせたそうです。さらに、グーグルのオープンモデルGemma 4 E2BをA100 GPU上で2.85倍高速化し、人気の量子化学パッケージを最大2.3倍速くしました。AntigravityでArgonを使ったチームは、エージェントによるコード提出を35%以上増やしつつ、ロールバック(取り消し)を3分の1近く減らしたといいます。いずれもグーグル自身の数字なので、外部の開発者が数週間じっくり試すまでは「かなり有望」としておきましょう。

EVやロボットのファンが気にすべき理由

フロンティアモデルは、もはやただのチャットボットではありません。私たちが夢中になっているクルマやロボットの裏側で、コードを書き、シミュレーションを回し、センサーデータを解析しています。最上位クラスの推論が安くなれば、自動車メーカーのソフトウェアチームから小さなロボットスタートアップまで、その作業がみんな安くなります。トップ争いが激しくなれば、すでにテスラ車の中でドライバーと会話しているSpaceXSIのGrokも含め、どの研究所も気を抜けなくなります。

EVX Newsの見方

この1年、AIレースはOpenAI対Anthropicの構図で、グーグルは後ろのほうを走っている印象でした。Argonはすべての周回で勝つわけではありませんが、ずっと安い価格で、グーグルを先頭集団に引き戻しました。しかもMeta自身のフロンティアモデル発表の翌日に登場。「そろそろ落ち着くかな」と思っていた方には残念ながら、まったく落ち着きません。開発者にとっては朗報ですけどね。コーヒーでも用意してください。このレース、まだまだ減速しそうにありません。

出典:Google、The Verge、Revere、TrustLoud。

— EVX News編集部

アイキャッチ画像:Google(Gemini 4 Argonの発表記事より)。

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