トヨタは次世代のクルマを、ボディを変えずにバッテリーEV、プラグインハイブリッド、ハイブリッドのどれでも載せられる一つのプラットフォームで作ろうとしています。カギは新開発の1.5リッター4気筒ハイブリッド。EVのような低いボンネットに収まるほど小さく、燃費を15%以上改善する見込みだといいます。
トヨタ・モーター・ヨーロッパが28日(水)、ブリュッセル発の発表で計画を明らかにしました。新しい骨格の名前は「マルチパスウェイ・プラットフォーム」。世界は一斉に同じ速さで電動化するわけではない、というトヨタ年来の主張がそのまま名前になっています。
まずBEVありき、そこにエンジンの居場所を
EV好きにとって面白いのは優先順位です。トヨタはこのプラットフォームを「バッテリーEVとして妥協のない性能と商品力を発揮する」ように開発しているとしています。ハイブリッドのほうが、そのパッケージに収まるよう小さくならなければいけない。逆ではないのです。
だからエンジンもゼロから新しくしました。1.5リッター4気筒には自然吸気とターボの2種類があります。3気筒から4気筒へというと後退に聞こえますが、気筒を増やすとストロークを短くでき、エンジンの背を低くできます。Car Watchは今月、欧州でのトヨタ技術説明会をもとに、ターボ版は現行2.5リッター4気筒の出力域をカバーしつつ体積20%減・全高15%減、自然吸気版は体積・全高とも10%減と報じていました。目指すのはEVのeアクスル並みのコンパクトさです。
モーター、パワーコントロールユニット、インバーターも小型・軽量化され、既存のエンジンにハイブリッドを後付けするのではなく、全体を一つのパワートレインとして開発しました。自然吸気版は、いまの1.8リッターエンジンと1.5リッター3気筒が担っているハイブリッドの性能域をカバーする想定です。
15%はどこから来るのか
トヨタは機械的な摩擦の低減、熱マネジメントの改善、電気的なロスの削減、空気抵抗の低減によって「15%を超える燃費改善」を狙っています。最後の空気抵抗はプラットフォームとつながっていて、ボンネットが低くなればノーズもスマートにできるわけです。具体的な燃費の数値、発売時期、最初の搭載車種はまだ明かしていません。
くるまのニュースは、複数のパワートレインで展開すると発表されている「カローラコンセプト」を挙げ、次期カローラが最初の搭載車になる可能性を指摘しています。Car Watchも、欧州の説明会のパネルにカローラコンセプトの写真が載っていたと伝えています。海外ではInsideEVsやHT Autoも取り上げました。
ビジネス上の狙い
骨格を共通にすれば、開発費や工場への投資をBEV、PHEV、ハイブリッドの合計台数で割れます。トヨタはさらに、工場が「顧客の需要に合わせてパワートレインの比率をシームレスに調整できる」ようにするとしています。要するに、ある市場でEVの需要が跳ねれば同じラインでEVを増産し、伸び悩めばハイブリッドに振る、ということです。
新しいエンジンとハイブリッド技術は今後数年で他社への外販も増やす計画で、再生可能燃料やカーボンニュートラル燃料でも走れるよう開発しているといいます。
EVにとって、そして日本にとっての意味
トヨタがハイブリッドにさらに賭けた、と読むのは簡単ですし、半分はその通りです。ハイブリッドはトヨタの稼ぎ頭で、日本の買い手にとっても定番の選択肢。でも同時に、BEV版を「後回し」ではなく「基準」にしてクルマを設計し始めたことも示しています。テスラや中国メーカーはとっくにそう考えています。今月お伝えした2030年までに全車種をソフトウェア定義車にする計画や、日本メーカーが「中国並みのスピード」での開発を目指す動きとも重なります。
日本の買い手にとって現実的な意味は、一つのボディで選べることです。次世代のカローラ級のクルマが、近所の販売店ではハイブリッドとして、自宅に充電器がある通勤族にはEVとして手に入るかもしれません。ライバルも待ってはくれません。メルセデスは専用EVプラットフォームの「electric GLC」を日本で発売したばかりです。
出典:トヨタ・モーター・ヨーロッパ、くるまのニュース、Car Watch、InsideEVs、HT Auto
— EVX News編集部
アイキャッチ画像:トヨタ・カローラコンセプト(2025年)。写真:TTTNIS / Wikimedia Commons、CC0(トリミングあり)
